Z級度 ★★★★★
グロ度 ★★
演出 ★
結論:死に方雑っ!!
2016年 アメリカ
監督:カール・リンドバーグ
ストーリー
幼少時の虐待により全身に大火傷を負った男は、常にウサギの着ぐるみを脱ぐことはなかった。やがて彼は成長し、子供を虐殺する殺人鬼・・・都市伝説の『バニーマン』そのものの存在となり、仲間と共に殺戮を繰り返す。
登場人物
バニーマン(演:ダイアナ・プリンス)
ボロボロのウサギ。
・・・の着ぐるみを着た男性。本名はマイケル。幼いころ、父親から油をまかれて火をつけられるという虐待っていうレベルではない惨い仕打ちをうけるも、後述のジェイコブによって救われ一命をとりとめる。だが顔の火傷痕のせいで子供たちから常にいじめられており、作中に登場する過去の回想フィルムでは、金髪幼女の2人組に追いかけられ投石をくらっていた。そんな境遇の中で精神が捩れに捩れ、立派な殺人狂に成長。仲間たちと共に日々バニーマンとして人を殺しまくっている。
殺し方は単純で、基本は『持っているものを投げる』。投擲スキルがカンストしているのがその命中率は100発100中。しかもどうみてもひょいっと全然力を入れずに投げているのに、投げたナイフは必ず刺さり、1メートル近くある鉄棒は女の子の体を易々と貫き、スコップの柄の部分(※木製)は首どころか壁すら貫通するのである。手首の力が尋常じゃないのかもしれない。だがお気に入りの武器はやはりチェーンソーの様子。
冒頭で砂袋に少年をいれて砂漠を歩いていたが、運ぶ途中で暴れだしたため殴り殺すなど、短気というより癇癪持ちな性格をしている。また回想シーンによればスクールバスを襲い全滅させたりと大量の人間を殺しているらしい。・・・このエリアの警察ちょっと無能すぎやしないか。
その他の登場人物
■バクスター
冒頭に登場するアルビノの警官。この作品唯一の良心。最近起きている連続殺人事件に関連して怪しい人物には職務質問をかかさず、些細な仕草も見逃さないなど非常に優秀な警察官。映画が始まってものの5分でバニーマンを見つけ、捕まえるまであと一歩だったが、仲間に轢き殺される。
■カール
殺人鬼その1。
バニーマンの仲間で黒人のヒゲの方。
冒頭でバクスターを轢き殺したのはコイツ。殺人では演出担当で、犠牲者たちにバニーマンの半生を記録した映像を見せたり、デスゲームもどきをしかけたりする。殺人オバケ屋敷を作った時にはピエロに扮して客を盛り上げる役目を担った。まごうことなき殺人鬼ではあるが、後述のスキンヘッドよりは直情的ではない。
■名無しの仲間
殺人鬼その2。
バニーマンの3人いる仲間の一人で、黒人のスキンヘッドの方。名前を呼ばれるシーンがなく本名が不明。拠点の周りを歩き回っていた人間をスナイプしたり、被害者たちが逃げだした時には捕まえて始末したりと、一番殺人に躊躇がない人物。仲間意識が乏しいのかマイケル炎上シーンを見て爆笑したり、ジェイコブにも辛くあたる乱暴な人物。
■ジェイコブ
幼いマイケルを救った人物。
子供のころから一緒にいるマイケルの唯一の友人で、腕にはマイケルを助けた時に負った火傷の痕が今も残っている。だがあんな平原で一体なぜ彼は都合良くお布団を持っていたのだろうか。
喋ることが苦手で普段はジェスチャーを使うが、言葉はちゃんと話すことができる。殺人鬼メンバーの中で彼だけは唯一殺人はしておらず、主に遺体処理と、仲間たちが出かけている間の拠点の見張り番をしている。
あらすじ
凶行
凶行を重ねるバニーマン一行。
まず最初にキャンプ中の女子学生グループを襲撃する。
ぽっちゃり系の女子を飛びナイフで屠り、就寝中ではいてない女子学生を鉄パイプで串刺しにする。明らかにパイプが役者の後ろにあるが気にしてはいけない。
生き残った人間はホラー小屋に連行。
拉致した女子学生2人に「水にする?クモにする?」と二択を迫るカール。ちなみに水は硫酸で、飲んだ女子学生は胃どころか腹が全部溶けて体に穴が開いて死ぬ。
・・・言っておくが、硫酸を飲めば胃は勿論大ダメージだが、体に穴ぼこがあくことは断じてない。
さらにその後、クモを選んだ女子学生は体中にタランチュラを這わせられるが、別にタランチュラの毒で人は死なない。結局アホみたく開けていた口の中にタランチュラが入り込んだところで頭をブチ抜かれて死んでしまう。しかもクモは生きてる。
お次のターゲットは廃墟探検にやってきた3人組。
ヤロー1人に女子2人という組み合わせだが、探検中に着ぐるみだと思っていたバニーマンが動き出すという脱出ゲームみたいなドッキリをかまされる。だがビビリ野郎は女の子2人に重い扉を閉めるのを任せ、自分だけ先に逃げた挙句一切手を貸さずに壁にピタリと張り付いて動かない。さすがにこのシーンでは、扉のすきまからスコップをぶん投げて野郎に貫通させたバニーマンに拍手を送らざるをえなかった。
ちなみにこの後、女の子2人は何とか外へでるもバニーマンの仲間に捕まり、一人は殺され、もう一人は拉致されるのだが・・・
突然のカオス
生き残った一人の予想外の反撃を喰らい、幻覚剤(?)らしきものを注射されるバニーマン。全力でラリるが、こっからの映像がカオス。
\HEY!!/
おい誰だおまえ。
そして後ろのお月さまが実験兵器7号にしかみえねぇ。
陽気なポップソングと共に現われたこの謎のおっさん。このあとはなんとひたすらこのおっさんと安っぽい合成映像が延々と垂れ流されることになる。地獄か。かの有名なピンクのゾウみたいなことをやりたかったのだろうが・・・大事故である。
オバケ屋敷
結局バニーマンを盛大にバグらせただけで生存者の活躍は終わり、あっさり仲間に捕まって死ぬ。それからは大工仕事をしているバニーマンたちの描写が入り、気付けばボロボロのホラーハウスはハリボテ感溢れるオバケ屋敷へとリニューアルされていた。
そう。
なんとこの殺人鬼ども、犠牲者を見つけにいくのが面倒臭くなったのか、ホラーハウスを作って客を呼び、そいつらを皆殺しにするつもりだったのだ!!
客が全員出てこなかったら不信がられるだろ?とか、そんなたくさんの遺体どう処理するんだよ手狭なのに。とかいう常識というネジは吹っ飛んでしまったらしいウキウキな殺人鬼たち。だが案の定、仕留め損ねた血塗れの客が外へ逃げ出し大騒ぎし始める。
さらにここで、
カールがあっさりと客を射殺。
当然並んでいた客は大騒ぎして逃げ出す。
一体何考えてんだと思いつつ、画面上では当の本人が「警察きちゃうよ~ヤバイよヤバイよー」と慌てている。本当に何も考えてなかったのかコイツは!?
警察にビビり仲間割れを起こす殺人鬼たち。
カールとスキンヘッドは、バニーマンを仲間からはずす。「おまえのせいだからな!」と責めるが、ぶっちゃけノリノリで人を殺していたのはこいつらの方なのでわりと八つ当たりである。
ぼっちで車に乗り込んだバニーマンに、カールたちの会話を盗み聞いていたジェイコブが、彼らがマイケルを殺そうとしている、と警告する。そして・・・
「このまま森へ逃げて、幸せに暮らして」
「さよなら、僕の友達」
約束だと固く手を握り合うも、ジェイコブは撃たれて死んでしまう。
ここで友を失い怒り狂ったバニーマンがカールたちをギッタンギッタンに・・・
は、しない。
普通に走り去る。
おまえ本当に血も涙もないのか・・・
ラストのオチ
この世界の警察が果てしなく無能なため、なぜか次の日の朝、警察がくることもなくゆっくりと仕度をして逃走するカールたち。だが道中でバニーマンが乗っていた車を発見。森へと足を踏み込む2人。そんなに殺したいならなぜ前の日にとっとと殺らなかったのか。
当然待ち構えていたバニーマンにスナイピングされ、スキンヘッドは撲殺。カールはかつてのマイケルのようにガソリンをまかれて焼死させられる。
夕陽のなか、一人立ちすくむバニーマンことマイケル。
走馬灯のように過去に犯した殺人シーンが流れるなか、急に赤ん坊と、赤ん坊にキスする女性の姿が浮かぶ。そしてどこからか
「もう大丈夫」
「何も心配ない」
「ゆっくりと憎しみは消えていく・・・」
「永遠に」
という優しい声が聞こえてくる。マイケルは着ぐるみを脱ぎ、ウサギの頭を置き去りに、その場を後にするのだった・・・
感想
って何イイ話風に締めてんだおいぃ!!
一応ジェイコブの死の直後、バニーマン(マイケル)が何もせず立ち去ったのは、武器も手元にない状態で銃を所持している相手と戦っても勝ち目が無いと冷静に判断したからで、決してジェイコブに友情を感じていなかったわけではないと解っただけでも安心だったけど!・・・まぁジェイコブと天使像が重なって、彼の背中に天使の羽が見えるような場面があったり、彼はいい人なんだよー!みたいな超絶わかりやすい演出があったけれども。
問題点が多すぎる。
色々と言いたいことはあるがまずはこれ!
その1:とにかく演出がちゃっちぃ。
死体役の子供が明らかに自分から動いてたりと演出の甘さが目立つ。
とくに謙虚なのが、鉄パイプぐっさーのシーンやチェーンソーで頭ぱっかーん!なシーン。ここで使われる演出が、あの役者が脇にナイフをはさんで「ほーら刺さったように見えるでしょ?」というベタな視覚トリックという恐怖。高校演劇以来だぜこんなん見たの・・・。
あまりの懐かしさ(と、これを今の時代にやろうとした無謀さ)にちょっとした感動すら覚えるレベル。
その2:説明不足
登場人物たちがバニーマンとその仲間しかいないのに、彼らの関係性が全くみえないままストーリーが進むので非常に解りづらい。
DVDパッケージ裏のあらすじによると、拠点にしているホラー小屋はかつてのマイケルの実家&仕事場であり、仲間の3人の黒人は「家族と元同僚」となっている。が!!
誰が家族で同僚なのか作中ではさっぱりわからないのである。ジェイコブが家族なのかと思ったが、彼は最後に「友達」と告げている。誤訳でなければ彼は元同僚だ。だとすれば、カールかスキンヘッドが家族なはずだが、そんな素振りは作中では一切無い。
さらに、作中で何度も登場する『幼いマイケルが炎上しジェイコブに助けられる一部始終』や、幼女にイジメられている映像が納められているフィルム・・・これは一体誰が撮影したものなのか?
当初はマイケルの心象風景なのかと思っていたが、作中で実際に登場しているので、本当に存在しているフィルムなのである。カールたちが撮影したのであれば、今一緒につるんでいるのはおかしい。
伏線もなく、特に何かを暗示させるシーンもなく、スプラッターシーンも気の抜けた炭酸みたいな感じで爽快感もなければ緊張感もない。唯一グロい死体の特撮だけは頑張っていたが・・・ホラーというよりカルト映画にしたかったのだろうか・・・。
実は同名作品あり
実はこの作品、2013年に同監督が録った同名の作品「バニーマン/鮮血のチェーンソー」の続編?のようなもの。鮮血~で使われたフィルム映像がラストの方でも登場するのだ。一体なにゆえこんなもんの続編を作ろうとしてしまったのか詳細は不明だが、恐らく前作は見なくとも視聴には全く問題ないだろう。何せ意味がわからないのだから。
前作も今作も、アメリカに本当にある都市伝説「バニーマン」が元ネタ。本来はハロウィンの時期に現われる白いウサギの着ぐるみ姿をした殺人鬼らしく、こちらは斧が標準装備。・・・どうせならもっと伝説に忠実に、本気だして作ってもらいたかったものである。
~こんな人にはオススメできません~
■Z級好きじゃない人
見るのに覚悟いる。
我こそはZ級を極めし勇者・・・!といえるぐらいの人でなければ厳しい。
最後に!
これは愛せない方のZ級。
笑って楽しめるわけでなく、さりとて見所もおすすめポイントも特にないという・・・。そしてパッケージをわざとピンク色にしてロビーくんに寄せたのまじ絶対許さない。
でも最終バトルの山の中にあるトレーラーハウスの内装といいホラー小屋といい、なんとな~くフリーのホラーゲームを意識したのかな?という感じはしました。でも一番気になったのは、とにかく画面が明るいことかもしれません。昼間は白みがかって見えるほど明るく、夜間のシーンでも暗がりのシーンでも凄い明るいんですよね・・・。殺害シーンのチープさも大きいけれど、ここも怖くない原因だったのかも。
ちょっとしたことで面白くなることもあるZ級映画ですが、その逆もまたしかりと痛感した映画でした。
↓ロビーくんはいないよ。
↓愛すべきZ級映画たち。