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【アニメ】僕だけがいない街~蜘蛛の糸やロゴの考察、キャスティングなど演出面についてのまとめ~【総括】

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原作・アニメともに大円団を迎えた「僕だけがいない街」!今回は謎が謎を呼ぶ「蜘蛛の糸」の考察や、アニメのキャスティングや演出面についてなど、色々とまとめてみたいと思います。

※アニメ「僕だけがいない街」のストーリー、及びエンディングについてネタバレしています。未視聴の方はご注意ください。

※原作はまだ未読。アニメのみの知識で考察しています。

目次

構成と演出について

個人的には海外ドラマの24に匹敵する、最高の引きの良さ!毎週毎週「ら、来週何が起こるんだ!?」という期待感が半端なかったアニメでした。30分のアニメの中に、盛り上がりどころをテンポ良く盛り込み、毎回最高に気になるところで話を終わらせるという各ストーリーの構成は完璧でした。

また、単なる謎解きだけではなく、加代と徐々に心を通わせていく流れなど、登場人物の心情を中心とした話運びにしていたのも素晴らしかったですね。アニメスタッフさんがいかに僕街という作品を大切にしてくださっているのかがわかります。

演出面では、リバイバル《再上映》という能力から、過去に戻った時は《上映中》の映画を思わせるシネマ風のものになるという映像が良かったです。時間軸が行ったり来たりする中、視聴者にも一発で過去なのか現在なのかわかるという非常にうまい作りでした。

他にもOPが
・11話で悟の姿が消える
・最初隠されていた目線が、黒幕が解った後ははずれる。
・銃弾のシーンで割れたメガネに黒幕が映るようになる。

と変化していったり、1話の時点で蜘蛛の糸がちゃんと被害者たちの頭上に描写されている・・・など細かいギミックが仕込まれていたことも驚きです!あと、黒幕の正体を声優のキャストから予想する自分のような輩をミスリードするため、黒幕の声優名まで偽ったのは見事でした!!

原作を読んでいる人間も未読の人間も、両方を全力で楽しませるための細かい仕様が溢れていて、アニメを見直す楽しみが増えていく一方でした。後述しますがサブタイトルのロゴが少しずつ変化していったのも、素敵な演出でしたね。

OPとEDについて

どちらも歌詞の内容がきちんとアニメの世界観に合わせて作られていたのが最高でした。オープニングらしく勢いがあるメロディのアジカンさんの「Re:Re」、毎回気になる終わり方をする本編の余韻をそのままに、エンディングらしい切なげな歌声が特徴的だった「それは小さな光のような」・・・個人的に、どちらも「僕」「君」が使われていたことがツボでした。

個人的にはOPのタイトルが、返信に返信した時につく「Re:Re」となっているのは、作中で悟が2回リバイバルしたことにかけているのかなーと思ってみたり。(原作をまだ読んでいないので、そちらに絡めているのかもしれませんが)色々と想像させてくれる、素敵なタイトルですよね。

※追記※
コメントでご指摘いただきましたが、OPの「Re:Re」は2004年のアルバムの曲とのこと。オープニング自体が"リバイバル"されていたとは・・・!僕街のイメージソングという訳ではなかったようですが、だというのに歌詞やタイトルがここまでぴったりというのが驚きです!

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キャスティングについて

藤沼悟(29歳):満島真之介さん
1話では聞きようによっては棒読みに近く感じられる瞬間もあったものの、回を増すごとにモノローグから違和感が消えていきました。1つだけ残念だったのは、7話で「戻れ!」と叫ぶシーン。はじめて悟が自力でリバイバルを起こすという大事なシーンだっただけに、迫力不足は否めなかった。ただ全体的には、悟の(リバイバルという能力意外は)「平凡な男性」という役柄にピッタリの声だったと思います。

悟(少年時代):土屋太鳳
加代が死んだ時系列の少年時代の悟と、声色は少年だが、中身は29歳の悟を演じ分けるという難しい役柄を担当されていましたが、給食費の事件から加代を庇った時の一喝といい、10話の八代との対決シーンの絶叫といい、力強い声の演技を魅せてくれました!

加代:悠木碧さん
萌えではない、しっかりとした子供の演技でありながらも、最初のツン全開の「バカなの?」は全国のとある嗜好を持った紳士にはご褒美でした。そしてそこから徐々に「バカなの?」に込められたニュアンスが変っていく過程もまた大変にご褒美でした!虐待に苦しむ孤独な少女という役柄でしたが、彼女を「守ってあげたい・・・!」と悟だけではなく全視聴者に思わせるキャラクターにしたのは悠木さんの芝居あってこそだと思います。

脇をしっかりと固めたベテラン勢

最高の母親を演じた高山みなみさん、父親を髣髴とさせるポジションで、最大のどんでん返しを担った宮本充さん。その他のキャラクター全て、一人たりとも手を抜いてないキャスティングでした。特に僕街は主役を俳優陣が演じている時点で実写ドラマと大差ない芝居をしていたように思います。小学生を子役ではなく、声優が演じていたところも良かったです。特にケンヤのイケメンっぷりやヒロミくんの可愛さは最高でした・・・!

タイトルのロゴの考察

既に色々なところで話題となっている、「僕だけがいない街」というタイトルのフォント。「僕だけ」が完全に明朝体で、「がい」でフォントにゴシックが混じっていき、「ない街」がゴシック体になっているというこのつくり。

明朝体というハネがある字から、ゴシック体になるにつれトゲが消え均一化されていくことから、当初は「過去から未来への時間の経過、風化を表しているのか?」と思っていました。

アニメでは1話のサブタイトルは明朝体でしたが、それから徐々にフォントがゴシック体になっていき、最終回の「宝物」では完全にゴシック体になっていましたね。

このことから、フォントの推移はタイトルにちなんで「僕(悟)という存在が消えていく」という演出だったのかな、と。「あったものがなくなっていく」という意味合いが込められているのかな?考察してみたり。なので最後は悟が死んでしまって、彼の存在が完全に消えた世界だけ残るんじゃ・・・と結構ドキドキしてましたが。

能力についての考察

■赤と青
犯人を演出する要素と、実際はさらに「蜘蛛の糸が見える」という八代の能力をあらわしていた「赤い瞳」(OPで目線が隠されていたのは、モンタージュっぽさを出す為と、この瞳の色を隠すという両方の意味があったようですね)。そしてそれに相対する悟の目の色は、リバイバル時に現れる蝶の色と同じく「青」となっていました。色という形で既に二人の対比は描かれていたんですね。

■八代と悟の能力
そもそも悟のリバイバルという能力は、八代の存在ありきの能力ではあります。なので、この二人の能力の根本は、同じものな気がしてなりません。悟が八代に父親の姿を重ねていましたが、八代の蜘蛛の糸という能力から、悟のリバイバルという能力が生まれたと考えれば、そういった面でも八代と悟は「父と子」ともいえるのかも。

蜘蛛の糸の能力自体は「八代にしか見えていない」ということから、八代の鋭い洞察力が、ある種の人間性を感じ取った時に見えている(ような気がする)という解釈もできなくもないですが、リバイバルについては説明が一切できないので、悟のマンガに登場する「死神」のような、人の寿命や運命を観測している上位存在がいるのでわ・・・とか考えるのは厨二病末期でしょうか?

八代の殺人の動機について

■ハムスターはなぜ「スパイス」なのか
八代の蜘蛛の糸が見えるきっかけを作ったハムスター。とても重要な存在ですが、なぜ「スパイス」と名づけたのでしょうか。おそらくは八代の人生にとって特別な刺激であるということからスパイスという名前になったのでしょうが、本来なら助けた八代が釈迦であり、このハムスターが「カンダタ」になる気もしますが・・・

■八代はカンダタか?釈迦か?
生前は極悪人だったが1匹の蜘蛛を助けた善行により、地獄から救済されるチャンスを得たカンダタ。1匹のハムスターを助けたことにより、救済の糸が見えるようになった八代は普通に考えればカンダタの立場ではあります。(だからハムスターにカンダタと名づけなかったのかもしれません)

カンダタと同じように、ハムスターの件から八代には生来の残虐性があるように思えますが、しかしだから快楽殺人を繰り返していた・・・というわけでなく、「蜘蛛の糸を切る」ことに執着していた、という方が近いと感じました。

なので当初、八代は自分を釈迦側・・・神のように人間の寿命を支配できることに喜びを感じていたから殺人を繰り返していたのかな、とも思いましたが、最終話での悟の依存っぷりを見るに、彼はもう一度スパイスと同じ、カンダタのように地獄に落ちまいと抗う人間を探していたのではないか、と今は思います。

蜘蛛の糸の考察

ではこの「蜘蛛の糸」とはなんなのか?
最初に思ったのは本人の寿命のようなものなのかな?と思いました。でもそれだと人によって見える見えないが分かれる理由がないんですよね。

コメントでは「孤独な人」に糸が見えるのではないか?という考察がありました。孤独や人との繋がり、という点で考えると、佐知子母さんや、加代が助かった時系列の悟の頭上にも糸が見えていたことをふまえ、過去に辛い別れを経験したことがある人間に見えていたのではないか?と、思いました。八代風に言うなら「心に穴がある人間」というのでしょうか。

頂いたコメントの通り、アニメの最終話で八代の頭上の蜘蛛の糸が切れたあの描写は、八代の心の穴が悟の存在で埋まった、ということなのかもしれません。

■もう一つの解釈
芥川龍之介の創作でありながら、神話や伝説のような扱いを受けている蜘蛛の糸。本来、釈迦が垂らした救済の糸が切れる、というのは地獄に落ちることを意味しますが、救済されるということは天国に召されるということでもあります。

「ひとりぼっちじゃない」といった悟の言葉を聞いて、八代の頭上から糸が独りでに切れた描写は、死という救済の必要がなくなった。という解釈もできるのかも。

アニメオリジナルの最終回について

原作と同時にフィニッシュ、しかもそれぞれ展開が違うとはこれまたうまい作りで、どちらのファンも満足させる最高の展開だったと思います。アニメでは八代先生をも救った悟の聖母ぶりに仰天しましたが、一応は(元の時間軸では)殺人犯である八代が裁かれないという結末に、原作組の方は好き嫌いは分かれるのかもしれませんね。

僕だけがいない街 Another Record

正直八代先生の過去や心情についてはアニメでは補えないところ多いのですが、なんと3月30日にイケメン弁護士となったケンヤが主人公の小説が発売されます!(おそらく原作ルートの)逮捕された八代先生との対決(?)が描かれるとのこと・・・これを読めば八代の内面について知る事ができるかもしれません、楽しみです!

【最後に!】
原作は買ったのですが、エンディングが違うこともあり、あえてまだアニメの知識だけで色々と考察してみました。ただ「蜘蛛の糸」や「八代の殺人の動機」の解釈は、アニメと原作で異なっているのでしょうし、明確な答えというのはないのだとも思います。

原作を読んでいないことで悶絶したりオリジナル展開に気付かず盛り上がり損ねたり色々とありましたが(笑)おかげでアニメも原作もめいっぱい楽しめるので、この原作未読のままアニメを視聴するという見方は、結構贅沢なのかもしれませんね。

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↓僕街の感想はこちら!