恐怖度 ★★★★
切なさ ★★★★
伝説の名シーン 鳥肌もの
結論:イジメっ子いと憎し!!
1976年 アメリカ
監督:ブライアン・デ・パルマ
原作:スティーヴン・キング
/主要人物/
■キャリー・ホワイト(演:シシー・スペイセク)
気弱な女子高生でイジめられている。
初潮をきっかけにある能力を得る。
■マーガレット・ホワイト(演:パイパー・ローリー)
キャリーの母親。
狂信的なクリスチャン。
■スー(演:エイミー・アーヴィング)
キャリーのクラスメイトで、唯一キャリーをイジメていたことを反省し改心した子。
だがしかし、それが惨劇のきっかけになってしまった。
■トミー(演:ウィリアム・カット)
スーの彼氏だったが、スーからキャリーをダンスに誘うよう頼まれる。
最初は嫌々だったものの、ダンス当日に見違えるように綺麗になったキャリーに惹かれ、キスまでしちゃう。
■コリンズ先生(演:ベティ・バックリー)
虐められているキャリーにも優しく接してくれる女性の体育教師。イジメっ娘がナメた口を利けば容赦なく平手打ちをぶちかます厳しい先生でもある。
ストーリー
ハイスクールに通うキャリー。体育の授業後にシャワーを浴びていた際に突如初潮が来てしまい、初潮の存在を知らなかった彼女はパニックを起こしてしまう。性の知識の無さから来る奇怪な行動や気弱な性格から、クラスメイトの女子からいつもイジメられていたキャリー。だがそれは狂信的なクリスチャンである母親に育てられていた所為だった。異常なまでに性欲や女を敵視する母親は、"女になった"とキャリーを責め立て折檻する。
だがその日から、キャリーの周囲で勝手に物が割れるなど不可解な出来事が起こり始める──
ちょうどその頃、クラスメイトで唯一イジメを反省したスーが、キャリーのために何か出来る事を・・・と考えた末、自分の彼氏であるトミーに「キャリーをプロムに誘って」と頼み込む。結果、トミーとキャリーは二人でプロムへ行くことに。生まれて始めての男の子とのダンスに夢のような体験をするキャリー。しかしそこでは、卑劣なイジメっ子による最悪の"舞台"が用意されていた・・・
ホラー&青春劇
この映画は、陰険なイジメを極めて明るいノリで平然とやってのける女子生徒たちや狂信的な母親といった"人間"の恐怖と、 キャリーの隠された能力の恐ろしさを描いた超常現象的な恐怖描写によりホラー映画と銘打たれているが、それに加え、高校のプラム(*1)を舞台にした、10代の男女の青春劇として楽しむことも出来る。
このイジメられる日々から幸せの絶頂、そして惨劇と、
上げて上げて奈落の底へ突き落とす!という物語の落差をキャリー役のシシースペイセクが見事に演じきったことで、40年近く立っても色褪せない傑作映画となっている。
最大の見所:役者の演技力
前半のヒステリックに泣き叫び、病的なまでに気弱で、お世辞にも可愛いとはいえなかった姿から想像も出来ないほど、プロムで美しく"女の子"にドレスアップしたキャリーの変化を演じたシシー・スペイセク!
男の子とのダンスや初めてのキスに胸をときめかせ青春を謳歌し、少女らしさを取り戻したキャリーが笑う姿はもう完全に別人。単にドレスを着たから、化粧をしたから・・・ではなく、人間は表情や仕草だけでここまで変わるのか、というシンデレラっぷりを魅せた。
だがカップル投票で1位に選ばれ、幸せの絶頂で舞台に立ったのち、映画界に残る伝説の名シーン・血塗れキャリーになった後は、気弱な少女でも先ほどまで笑っていたシンレデラでもない、普通の人間とも違う"何か"になり、自分に優しく接してくれていたコリンズ先生やトミーも含め、その場にいた全員を焼き殺すという鬼畜っぷりを披露。この時の姿は一度見たら忘れられない。(特に両手を硬直させたままゆっくりと歩いていく姿が怖い)
CGを使わずとも役者の体一つで恐怖を表現できるという最大の見本だった。
笑われているシーン、あれは現実?
イジメっ娘の策略により意図的に1位に仕立て上げられ、豚の血たっぷりのバケツの下の舞台へと導かれてしまうキャリー。ドレスが真っ赤に染まり、イジメっ娘や周囲の嘲笑に晒されたキャリーは大覚醒してしまうが・・・
この時、イジメっ娘だけではなく、コリンズ先生や周囲の教師たちも笑っている。しかしこれは現実なのだろうか?生徒たちはともかく、教師があの状況を笑ってみてるというのは違和感がある。またトミーだけではなく周囲の人間も見違えるように美しくなったキャリーに惹かれていた描写があるので、このシーンはキャリーがイジメっ娘の笑い声を聞いたことにより、周囲の全員が自分を嘲笑していると思い込んだキャリーのイメージであって、恐らく現実で起きているシーンではないのだろう。
母親役も名演技
女を嫌悪していた母親は、惨劇のあと家に帰ってきた娘に父親に抱かれた時の話をする。そこで「うれしかった」と語る母親。信仰からくる狂気じみた貞操観念を持ちつつも、本能である女性の性が自分にあったことに絶望したのか・・・。虐待に近いキャリーへの振る舞いも、もしかしたら彼女自身、母親から同じように折檻されて育ったのかもしれない。(原作未読の為、あくまで映画版を観ただけの視点からの妄想だけど)
今までのヒステリックな態度とは違い、穏やかに娘の手を撫でながら語りかけるシーンだが、そこにはケタ違いの狂気が込められている。パイパー・ローリーの演技が光る、これもまた名シーンの一つ!
切なさを吹っ飛ばす衝撃のラスト
穏やかだった母親に突然背中を刺されたキャリー。母親はキャリーが"汚れた女になった"罪を、そしてそんな娘を産んでしまった罪を自ら清算するために最悪の選択をしたのだった。殺される瞬間、身を守るためなのか、それとも今までの愛憎からなのか、テレキネシスを発動させ母親を包丁で滅多刺しにしてしまうキャリー。磔にされたキリスト像のように絶命した母親の姿を見て狂ったように叫ぶキャリーは、最後の力で家を破壊。母親を抱きしめながら、自らも崩れ逝く家に残った・・・。
逃げることも出来たのに、自分で殺してしまった母親と共に、何度も折檻のために押し込められたであろうお仕置き部屋らしき場所にひきこもって死んでしまうという展開は何とも切ない・・・結局この母娘は、外の世界に出る事が出来なかったのだ。
普通の少女の様に過ごすことに憧れていたキャリー。プロムが成功していれば、他の少女と変わりなく青春を過ごすことも出来ていたかもしれないのに・・・。
まぁそんな切なさも、唯一生き残ったスーのあのラストカットで見事に吹っ飛ぶのだが。
夢オチとか今でこそ定番になったああいうラストも、当時映画館で観た人は絶叫モンだったと思う。
全部スーの妄想とみるか、もしかしたら・・・?という楽しみを残してくれたこのラストも、今日まで根強い人気を誇っている一因の一つではないだろうか。
最後に
トミーとキャリーのダンスシーンが好きです。二人が踊っている姿をくるくるとカメラが回りながら映していて、今観るとこういう演出に古臭さを感じる人も多いとは思うのですが、星飾りの下で笑うキャリーがホントに可愛らしいので個人的にはお気に入りのシーン。
画面が二分割になる演出とかワイヤーが映っちゃったりとか時代を感じさせる部分も多々あるのですが、このあたりはきっとリメイク版で改善されているのでしょう。
↑母娘の名演技のお陰でハードル爆上げされてしまった感のあるリメイク。
他にもスーの「プラムにぼっちは可哀想だから彼氏貸してあげる(強制)」っていう余計なお世話じゃ!的な考え方とか、スーという彼女がいるのにも関わらずキャリーにチューしちゃうトミーとか、トミーとキャリーが「釣り合わない」発言しちゃうコリンズ先生とかに 引っかかるところもありつつも、 豚さんを××して血を集めやがった下種の極みのイジメっ子たち(ヤロー役は若き日のジョン・トラボルタ)がいなければキャリーとほんとに理解しあうことも出来たのかも・・・
もう少しで普通の女の子として生きる事が出来たかもしれないキャリー。ホラー映画としてはこの展開が大正解なわけですが、やっぱりキャリーにも何か救いが欲しいと思ってしまいますね。
↓キング原作の映画といえば!
*1:アメリカの高校で学年最後のイベントとして行われるダンスパーティーのこと。男女でペアを組んで参加することが原則