緊迫感 ★★★★
恐怖度 ★★★
ラスト 絶望した!
結論:日本のブラック企業なんて目じゃねぇ。
2010年 スペイン
監督:ロドリゴ・コルテス
/主要人物/
■ポール・コンロイ(吹:東地宏樹)
目が覚めたら棺の中だった・・・という最悪な状況に遭遇した男。
箱の中にあった携帯を頼りに、何とか外部と連絡をとろうとするが・・・
※ラストのオチに関するネタバレあり※
※未見の方は閲覧非推奨※
最大の見所:絶望的なシチュエーション!
埋められた箱の中にただ一人閉じ込められるという想像もしたくないシチュエーション!閉所恐怖症の人だけじゃなく、暗所恐怖症の人も絶望に叩き込むこの状況だけで既に怖いのにライアン・レイノルズの圧倒的な一人芝居が更に恐怖を加速させる。
体の向きを変えるのも一苦労する狭い箱の中で、ライターとペン、そして外部との唯一の連絡手段である「携帯電話」が主人公の生命線となっていく。
だが僅かな希望があるということが、後の絶望に繋がっていくのだ・・・。
主題は「犯人は誰!?」・・・ではない!
この映画の事前情報では「男が目覚めたら箱の中でした☆」以上の情報がなかったので、見始めた時はてっきり「主人公をこんな状況に追い込んだ犯人は誰なのか?」がテーマなのかと思っていた。が!
「誘拐された!」
「イラクで働いていた」
・・・などなどの情報が、携帯電話で助けを呼ぶ主人公の口から語られる。
主人公はアメリカの企業に勤めていて、イラクでトラックの運転手として働いていたが、トラックで荷物を運んでいるところを武装集団に襲われてしまったのだ。
つまり、
犯人はイラクの武装集団で、この状況は恐らく身代金目的の誘拐。
ということが、序盤ですぐに解かってしまうのである。
観ていた時は「えぇ~犯人の正体わかっちゃうの!?じゃあこのあと1時間何を楽しみにすればいいんだよ!!」と思ったものだが、この映画の楽しみは、主人公がたった一人で助けを求めあがく姿と、携帯電話の向こう側の人間とのやりとりが中心だったのだ。
顔の見えない登場人物たち
主人公が助けを呼ぶ警察、友人の女性、FBI、テロリスト・・・彼らは皆、携帯電話越しに「声」のみでしか登場しない人たちだ。この顔の見えない登場人物たちと絶望的な状況の主人公との会話は、聞いているだけで主人公と感情がリンクしてくる。
生き埋めにされかかってんのに社会保障番号とか聞いてんじゃねぇよ!わかるかんなもん!!ムキー!!
そして段々と「この人たちは本当のことを言っているのだろうか?」と、主人公の様に疑心暗鬼になっていくのだ。
本当にこの人たちは状況を理解しているのか?
主人公を本当に助けようとしているのか?
余りの温度差に、まるで別世界の住人のよう。
でも、これが「顔が見えない」ということなのかもしれない。遠く遠くにいる人間が、例え電話やネットで繋がって言葉を交わしたとしても、その言葉が真実なのか確かめる術が無い。もしかしたら、存在すらも・・・。顔の見えない人物とのやり取りは、こういった恐怖も表現しているのかも。
マーク・ホワイト
映画最大のキーワードといっても過言ではない、この「マーク・ホワイト」という名前。
この名前はFBI・ブレナーとのやりとりに不信が爆発した主人公が、たくさんの誘拐事件を担当してきたというブレナーに対し、「誰か救った人間がいるのならそいつの名前を言え!」と言われた際にブレナーが告げた名前である。
この名前を主人公は箱にしっかりと書きとめていた。
まるで希望にするように。
だが、映画終盤。
いよいよ生き埋めにされそうになる瞬間にブレナーから電話がくる。
「君の居場所を見つけた」「今助ける!」「棺があった!」「今開ける!」というブレナー。(終盤のこの畳み掛けるような展開は見事!)
だが、次の瞬間。彼の口から出た言葉は・・・
「すまない、ポール」
「マーク・ホワイト・・・彼の棺だ」
ここで、ブレナーが話していた内容がウソだと解かる。
人質にされて助かった人間など、いないのだ。
主人公は「OK、OK・・・」と小さく呟いて、砂の中に埋もれていった・・・
そして不釣合いなほど能天気なエンディング曲が流れ終わったあと、
MARK WHITEという主人公が書いた文字が映り、この映画は終わる。
このラストとマークホワイトという人物について、様々な解釈がある。
マーク・ホワイトとは誰だったのか。主人公と同じ時期に誘拐された人物だったのか、本当に過去に誘拐された人物だったのか。
そもそもマーク・ホワイトは実在していたのか?
ラストカットがわざわざ四角で囲まれたこの名前だったことに、何らかの意図を感じざるを得ない。マークホワイトも主人公も、永遠に箱の中ということなのだろうか・・・
~こんな人にはオススメできません~
■閉所恐怖症の人
1時間30分ずっと箱の中のシーン。耐久にもほどがある!
■どうあがいても絶望なラストが嫌いな方
救いは一切無い。ホラーやサスペンスが好きでも救われないラストが嫌な人にはおすすめしない。
最後に!
主人公が勤めている会社がわざわざ電話をかけてきて「誘拐された時点であなたは解雇されてるんで!こっちは責任とりませんから!」みたいな扱いしてきたことにもう絶望した!!ブラック企業もびっくりだよ!!
因みにこの映画、
原題が「BURIED」。
意味は「生き埋め」!
・・・日本語版のタイトル変えた人はエラい。マジで。
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