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【映画感想】セントオブウーマン/夢の香り~盲目の元軍人と青年の旅路を描く※ネタバレあり

セント・オブ・ウーマン/夢の香り [DVD]

SCENT OF A WOMANより
「足がもつれても、踊り続ける」

BGMの良さ ★★★★★★
感動度  ★★★★★
アル・パチーノの名演技 ∞
結論:惚れるしかねぇ。

1992年 アメリカ
監督:マーティン・ブレスト

──出逢いは最悪だった。
だが、彼との旅路で徐々に彼の心に惹かれ、そして彼の中の孤独を知っていく。果たして二人の旅路の終着点は──

/主要人物/
■チャーリー・シムズ(演:クリス・オドネル)
17歳の純朴な青年。
高校の友人が校長にしたイタズラを目撃してしまい、校長に犯人の名を問い詰められ、名前を言わなければ退学で名前を言えば推薦を書いて貰えるという二者択一を迫られている。
中佐に無理やり連れて行かれたニューヨークで豪華なホテルで高級な食事につき合わされるなど、その破天荒な行動に終始振り回される青年だったが──

■フランク・スレード中佐(演:アル・パチーノ) 
盲目の元軍人。非常に口が悪く女好き。
香りで女性が綺麗かわかったり、見えなくても主人公の動作に気付いたりと視力以外は鋭敏。
真の口先の魔術師

最大の見所:アカデミー主演男優賞を受賞したアル・パチーノの名演技!!

盲目という設定を見事に演じきっている。瞳が凄い。ダンスシーンなど動き回るシーンでも視線が揺らがない。破天荒な言動や「フーアー!(Woo-ah!)」という米陸軍独特の口癖など、アル・パチーノのアクの強~い芝居が素晴らしい!普段吹き替え派な私でもこの作品は字幕を強くオススメする。様々なピンチを口の上手さだけで乗り切っていく姿は痛快。表情と声色で何を伝えたいのかニュアンスはしっかり伝わってくるので英語が解らなくても充分に見応えがある。

女性を口説くシーンやダンスシーンのイキイキとした芝居から一転、全てをやりきって疲れ果てた中年の姿とのギャップが素晴らしい。

終盤の「おまえが苦しみの何を知ってる」という台詞には心震える。

見所①:BGMが秀逸!!

序盤の日常のBGMがのっけから素晴らしい。(なんかちょっと可愛らしいと感じるのは私だけだろうか。)有名なタンゴのシーンで掛かる「ポル・ウナ・カベサ」は涙が出るほど美しい曲なのでサウンドトラックもオススメしておく。(そしてこのシーンでタンゴのパートナーをする女性・ドナ役ガブリエル・アンウォーが超可愛い!)

ポル・ウナ・カベーサ(『セント・オブ・ウーマン/夢の香り』より)

ポル・ウナ・カベーサ(『セント・オブ・ウーマン/夢の香り』より)

  • ブラノン・ストリングス・オーケストラ
  • サウンドトラック
  • ¥150
  • provided courtesy of iTunes

見所②:風景の素晴らしさ

学校やさりげない街の風景が素敵すぎる。特に主人公が通っている男子校!
クラシカルな雰囲気が凄い好き!と思って調べてみたら、ロケに使われた実際の学校はニューヨークのEmma Willard Schoolという1814年創立の女学校!(英語版wikiより)
他にも主人公たちが止まる豪華ホテルなどロケーションが素敵。

見所③:年齢も立場も越えた友情を描いた物語

実家に帰る旅費を稼ぐ為、貧しいチャーリーはバイトをすることに。そのバイトとは盲目の叔父の世話をする事。出会い頭に説教され圧倒されるチャーリー。だがあれよあれよとニューヨークへ連れて行かれ、そこである計画につきあって欲しいといわれる。彼が言う計画とは、ファーストクラスに乗り、最高級のホテルで食事をし、ワインを飲む。そして最高の女性と一夜を共にする!だがその計画の最後は、人生最良の日を迎えた後、自分の人生に自分で幕を引くことだった。

何となくこの気持ちが解るというか、これが最後だと思い目一杯いい思いをしたらもう全て終わらせてしまいたい──そんな願望を抱いた事がある人は少なくないんじゃないかと思うんです。

この自殺を止めるシーンはアル・パチーノの鬼気迫る芝居と、青年の、中佐と比べれば少ないボキャブラリーながらも涙を流して説得する純粋さが胸を打ちます。この映画はタンゴのシーンが名シーンとして有名ですが、負けず劣らずこの二人のシーンも素晴らしいです。

二人の間に確かな絆が芽生え、別れのシーンでチャーリーの顔に触れるその優しい手つきに泣き、別れた後学生裁判に掛けられたチャーリーを救う為に身一つで乗り込んでくる中佐の姿に、そして言葉だけで大勢の空気を変えたその口の上手さに感動します。
年齢も立場も全く違う人間が心を通わせていく過程を丁寧に丁寧に描いた名作でした。

~こんな人にはオススメできません~
■長い映画がダメな人
決して単調なわけではないが、映画の時間は2時間30分あるので最近の短い映画に慣れている人はそれなりに心されたし。

最後に

当初タイトルで勝手に恋愛モノだと思い込んでましたが、近年の映画には少なくなってしまった、一人ひとりの役者の芝居がじんわりと心に響く、本当に良い映画でした! 

人生はタンゴと変わらない。
足がもつれても、苦しくても、踊り続ける。
──独りではなく、誰かと共に。