ヨーロッパ企画 第18回公演
『サマータイムマシーンブルース 2005』
※2005年に再演された舞台(DVD)の感想。
※ラストのオチまでのネタバレあり。ご注意!
目次
登場人物
この物語は、SF研究会のくせにちっともSFを研究しない野郎6人と、そんなSF研の部室の一部となってしまったカメラ部の女の子2人(+1人)、そこに尋ねてきた謎の男・田村、総勢10名の登場人物たちによる超小規模なタイムトラベルストーリーである。
SF研の野郎ども
■甲本(演:中川晴樹)
「全然わかんない。流れがみえない」
立ち位置的に主人公っぽい。
写真部の女の子・柴田に思いを寄せている。
■小泉(演:石田剛太)
ノリだけで生きてる部員。一番曽我をこづく。
真っ先にタイムトラベルをしようと言い出した人物。
■新美(演:諏訪雅)
「オレのヴィダルサスーン盗っただろ!!」
シャンプーになみなみならぬこだわりを持つSF研の部員。メタボ体型。序盤、近所の銭湯「オアシス」で誰かにヴィダルサスーンを盗まれたと騒いでいたが・・・?
■石松(演:土佐和成)
なんでも盗んで拾ってくるのが趣味という困った部員。
劇中では薬屋のケロヨンやカッパ像まで部室に持ち込んでくる。しかし現在のケロヨン(※本当の名前は「ケロちゃん」)はプレミアム価格な場合が多く、現実でやったらガチ通報ものである。
■曽我淳(演:永野宗典)
全ての発端となった「クーラーのリモコン」をコーラでびしょびしょにした張本人。何かとイジられキャラな部員で、作中で一番とんでもない目に遭う。乗り物には超絶弱い。
演者の永野さんは映画版にも同役で出演。
■小暮(演:酒井善史)
冷蔵庫がクーラー代わりになると喜ぶ曽我たちに現実を突きつけた人。
他のメンバーとは違いSFがサイエンス・フィクションの略であることを知っていたりと、メンバーの中では一番SF研らしい人物。
カメラ部
■照屋(演:角田貴志)
「今日僕の誕生日じゃないよね??」
カメラ部唯一の男性。なぜか話が全く噛み合わない。
大学生活が長く、近くにある河童像の由来など色々と詳しい。
■伊藤(演:西村直子)
部員が減り、SF研の一部と化してしまったカメラ部の女の子。前日、SF研メンバーが野球大会をしているところを撮影していた。写真に躍動感が感じられないのは彼女の腕のせいではない。
写真には何故か曽我が2人映っていたが・・・?
■柴田(演:清水智子)
甲本から思いを寄せられているカメラ部員。
序盤で甲本と一緒に映画を観る約束をする。
謎の青年・田村明(演:本多力)
夏休みにSF研を尋ねてきた、滑舌がちょっとアレな青年。
見るからにもっさりとした冴えない風体だが、実はタイムマシンに乗って25年後の未来からやってきたSF研究会の部員。しかしパイロットなだけで、本人は殆どタイムマシンについて知らない。演者の本多さんは映画版にも同役で出演。
その他の用語
■ケチャ(犬)
部室の外にいるわんこ。
序盤で何かを地面から掘り出そうとしていた。舞台版では「外にいる」という設定のみで登場はしない。
■オアシス
近所にあるSF研いきつけの銭湯。
骨が折れる勢いで揉んでくるマッサージ機、微妙にシビれる風呂、音だけ凄くて熱が殆ど伝わらないドライヤーなど色々とおかしい。でも行く。
あらすじ
うだるような暑さの中、夏休み中の大学の部室でだれまくっていたSF研のメンバーたち。彼らは昨日、バカ騒ぎの末にクーラーのリモコンを壊してしまったのだ。
そんな中、部室にどっかのアニメで見た事があるような代物が置いてあるのを発見する。それは・・・
出典:http://store.shopping.yahoo.co.jp
_人人人人人人人人人_
> タイムマシーン <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄
ドラえもんのやつだ───!!と大騒ぎするメンバー。
誰かのイタズラだと思いつつノリで曽我を乗せたところ、タイムマシンは本当に消えてしまう。なんとこれは正真正銘、本物のタイムマシンだった!!
盛り上がった野郎どもはこの猛烈な暑さを打破するため、早速「昨日」に戻って壊れる前のクーラーのリモコンを取ってこようとする。
しかし!
過去を変えて「リモコンが無い世界」になってしまったら、今のこの「リモコンがあった世界」・・・今の自分たちは消えてしまうことに気付いた残りのメンバー。
「今日」の世界を守るため、「昨日」を変えないためのすったもんだが始まった!
舞台らしいギミック
狭い部室で繰り広げられる、「昨日」と「今日」をいったりきたりするだけのタイムトラベルストーリー。
映画ではCGを使って描かれていたタイムトラベルシーンも、舞台では暗転と点滅する照明で表現され、あとは基本上手側にある外へと通じる窓から役者が出入りし、「昨日の自分」と「今日の自分」を早着替えで演じるという、小劇場ならではの試みが面白い。
何の生産性もないグダグダな会話、学生らしゆるいノリ、タイムパラドックスを防ぐため、先にタイムスリップした3バカと後発組でひたすらあーだこーだする会話劇だが、狭い舞台をよく動く役者陣、序盤から張られている伏線が回収されていく鮮やかさなど最後まで飽きさせない作品だった。
作中の事象
■野球大会の写真
タイムスリップしていた曽我が前日の野球大会の写真に写っていたことから、タイムマシーンが本物であると証明される。
■タイムマシンの設計図
25年後のSF研の部室にあった冷蔵庫からタイムマシンの設計図を発見し、それを元に田村たちがタイムマシンを作成した。設計図には25年前の「今日」の日付が書かれており、田村はこの時代のSF研のメンバーがタイマシンを作ったと思っていたが、その設計図は「田村が乗ってきたタイムマシン」を元に小暮が書いて冷蔵庫に入れたものだった。
つまりタイムマシンが本来はどこから来たものなのかは、作中では謎のままである。
■可愛そうな照屋さん
序盤に登場した時から、部室においてあったタイムマシンを「昨日見た」と言ったり、初めて会ったばかりの田村と「昨日話した」と言ったり、何かと話がかみ合わない照屋さん。これは前日に、タイムスリップしてきた「今日の世界」の田村たちと出会っているため。(その時に田村を「石松の従兄弟」と紹介してしまった)
■新美のヴィダルサスーン
昨日にタイムスリップした自分自身が盗んでいたので完全なる自業自得。
■カッパ様
前日の野球大会で曽我がボールをぶつけたカッパ様の像。照屋いわく、「昔この辺りが沼だったとき、そこで泳いでいた人影が突然消えた」という伝説から作られた像だが、これは99年前にタイムスリップし、沼に落ちた曽我のことである。
■時をかけるリモコン
コーラによってご臨終してしまったリモコン。
作中では「昨日の世界」から壊れる前のリモコンを曽我が持ち出し、そのまま99年前の沼に落としてきてしまった。しかし、結局は田村が「25年後の未来の世界」からリモコンを持ってきたことでパラドックスを防ぎ、一件落着となる。
そして沼に落としたリモコンはその後、99年経って「今日の世界」でケチャが地面から掘り出した。99年間持った電池マジすげぇ。
■タイムスリップした甲本
昨日の世界にタイムスリップし、「昨日の自分」に会わないよう慌ててロッカーに隠れそのままロッカーの中で夜を過ごす。
その後「今日」の時間軸で、自分がタイムスリップするのを見届けてからロッカーから出てきた。
田村の正体
西暦2030年の世界からやってきた田村。
タイムマシンを設計したSF研のメンバーに会いにきた。(ちなみに25年後の世界では「SF」ではなく「エツエフ研」になっていたらしい)。
母親がここの学生であり、近くにあった映画館が好きだったこと。母親のカメラが柴田のカメラと同じだったことから、田村の母親が柴田本人であろうことが示唆されている。
その後、柴田の結婚相手の苗字が「田村」であろうことを知りショックを受けた甲本が、苗字を変える方法を模索したところで物語は終わる。
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最後に!
DVDで改めて視聴しましたが、2005年当時、札幌で実際に公演を観たことを懐かしく思い出しました。これを観る為にはじめて琴似駅で降りたっけなぁ・・・。小さな劇場にびっしりと敷き詰められた小道具の数々。このぐちゃぐちゃ加減がまさに大学の部室!という感じで素敵でした。新美演じる諏訪さんに「おまえヴィダルサスーンって言いたいだけだろ!」というツッコミが面白かったのが今でも記憶に残っているのですが、DVDにはなかったので、これはアドリブだったのかも?
舞台版も本当に面白いので、映画しか観た事がない人にはおすすめです。未視聴の方は是非!
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