恐怖度 ★★★
BGM ★★★★★
ストーリー ★★★★★
結論:悪魔より監督の方が怖い。
1973年 アメリカ
監督:ウィリアム・フリードキン
脚本:ウィリアム・ピーター・ブラッディ
※吹き替え版キャストは2001年に放送された金曜ロードショー版です。
※ストーリーに関する重大なネタバレあり。未視聴の方はご注意!
※感想だけを読みたい方は「目次」で解説を飛ばしてください。
目次
登場人物紹介
■リーガン(吹:かないみか)
12歳の少女。
快活な美少女だったが、取り憑かれてからはフ○ックとかいっちゃうわ、首が180度回っちゃうわ、キン○マを握りつぶそうとするわ、ブリッジしたまま階段を降りるわ、緑色のゲロを吐きまくるわ、とんでもないことになる。
子役ながらに体を張ったリンダ・ブレアの狂演は凄まじいの一言。
■クリス(吹:藤田淑子)
リーガンの母親で女優。夫とは離婚している。
突然様子が変わった娘を病院に連れていくも一行に回復の兆しを見せず、体にも脳にも何の異常も発見できなかったため、一縷の望みをかけて、カラス神父に悪魔祓いを依頼する。
因みに彼女は無宗教である。
■カラス神父(吹:てらそままさき)
ボクシングや走り込みなど、常に肉体鍛錬も欠かさない意外に肉体派なカトリックの神父。
大学で精神医学を学んでいたため、神父のカウンセラーもしている。そのためクリスから悪魔祓いを頼まれた時も、リーガンの症状をあくまで精神科医の視点で診察。悪魔の存在には否定的だったが、自身の母親の死をリーガンの中の悪魔が知っていたことや、常軌を逸した現状を前に、ついに悪魔祓いを決意する。
■キンダーマン警部(吹:大塚周夫)
リーガンの周囲で起きた死亡事件を調べている警部。
映画好き。
■メリン神父(吹:久米明)
イスラエルで発掘調査中、悪魔の像を発見した老神父。
帰国後、カラス神父と共にリーガンの悪魔祓いに挑む。
■ダイアー神父(吹:岩崎ひろし)
カラス神父の親友。
演じているウィリアム・オマリーは本物の神父であり、俳優ではない。
撮影の際、芝居経験がないのにも関わらず大量にリテイクを出され、挙句監督からビンタされたエピソードはあまりにも有名。
■悪魔(吹:石塚運昇)
リーガンに取り憑いている。
名前は本編では明らかにならないが、リーガンが描いた翼が生えたライオンのイラストや、冒頭の発掘現場にあった蛇の男根を持つ像から、彼はメソポタミア神話の風の神にして悪霊の王である「パズズ」であると推測されている。
熱病をもたらす風を運ぶと恐れられていたパズズだが、王ゆえに他の悪霊を退けるといわれており、古代メソボタミアでは逆にパズズを魔よけのお守りにするという信仰があった(悪魔にされてしまったのはこの辺りが原因だと思われる)
名曲!チューブラーベルズ
別名「エクソシストのテーマ」!
誰もが聞いた事があるであろう、どこか不安げなイントロが非っ常~に特徴的なこの曲は、実はマイク・オールドフィールド(Mike Oldfield)というミュージシャンのアルバムの曲のイントロ部分!あらためてフルで聞くと、映画とはまた違った印象が楽しめる1曲である。
↓映画用に編集されたお馴染みのテーマはサウンドラックに収録。
因みにチューブラーベルとは楽器の名前で、NHKのど自慢でお馴染みのあのベルのことである。
あの有名シーンを見るなら?
5月13日の金曜日!
てっきり某ホッケーマスクの出番かと思いきや、午後ローでは往年の名作・エクソシストが放送。しかも吹き替えは2001年に放送されていた金曜ロードショー版!やっほーい!
久しぶりの視聴、とっても面白かったものの・・・あれ?あの超有名シーンがない??
↑通称「スパイダー・ウォーク」
フィギュアになってたのか!!(笑)
Cult Classics - Series 7 Action Figures: The Exorcist - Regan on stairs
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実はエクソシストにはディレクターズ・カット版と劇場公開版、2つのバージョンがあるので、最初にテレビ放送版も含めそれぞれのソフトの違いについて簡単に解説します。
ディレクターズ・カット版
・ブリッジシーンがある。
・エンディングにダイアー神父とキンダーマン警部の会話シーンが追加。
・日本語吹き替え版はリーガン役が柚木涼花さん。
クリスが映画監督のバークが死んだと聞かされた後の場面に、リーガンがブリッジして階段を降りてくるシーンが追加されている。ただ、原作者がカットしたものを入れたのに、「ディレクターズ・カット版」とはこれいかに。
劇場公開版
・ブリッジシーンがない
・リーガン役がかないみかさん
・ラストはダイアー神父がカラス神父が死んだ階段を見下ろして終わる。
1973年に公開されたバージョンなので、当時映画館へ行って観た人にとっては一番馴染みがあるのではないだろうか。ちなみに、レンタルブルーレイには日本語吹き替え版が収録されていないので要注意。2001年に放送された金曜ロードショー版の吹き替えが聞きたい場合は、ブルーレイの「オリジナル公開版」を購入するか、テレビ放送を視聴するべし。
↓両方観たい方には2枚組のブルーレイがおすすめ!
午後ロー版
・ブリッジシーンがない
・カットされている場面が多い(キンダーマン警部とクリスとのやりとりや、リーガンの手術シーンなど)
・日本語版キャストは金曜ロードショーと同様。
・吹き替えが途切れない。
仕方がないことだがカットされている部分が多い。映画好きなキンダーマン警部がクリスにサインをねだるユーモラスなやりとりや、リーガンの手術のむごさを描いてた場面がカットされているのは確かに残念ではある。
が、ブルーレイに収録されている劇場公開版の吹き替えは、テレビ放映時カットされてるシーンで突如英語音声に戻ったりするので、日本語吹き替え版を楽しみたい!という方にとっては、テレビ版の良さもあるといっていいだろう。
感想
公開から40年経つが、今尚ホラー映画の歴史に残る名作!
とはいえ、言われているほど怖くはない。(人によってはぐるっと回転する首やブリッジシーンより、リーガンの手術シーンで首に注射する場面の方が怖いかも)
リーガンのグロテスクな特殊メイクや、サブリミナル的に映る悪魔の顔などホラー映画らしい恐怖演出も勿論ある。
しかし、前半の快活な少女から打って変わって別人の様に無表情になっていく様子を演じきったリンダ・ブレアの芝居や、母親やカラス神父が抱える苦悩、キンダーマン警部との緊張感あるやりとり・・・といった、役者の芝居で魅せるドラマ部分が見ごたえがあるからこそ、未だ色褪せぬ面白さがあるのだと思う。
神様の不在
この映画に神様は現れない。
ならば、メリン神父の死は持病の発作、バークもリーガンから突き落とされての転落死・・・というように、「悪魔が実在しない」という解釈もできるのではないだろうか?
カラス神父は神父相手のカウンセラーの仕事に苦痛を感じており、さらに認知症の母親を孤独のうちに死なせてしまったことによる罪悪感を持っている。
そして母親に深く愛されているリーガンも、内心では母親のことが好きな男(映画監督のバーク)の存在を気にしていたり、ひとりでヴィジャ盤(日本のこっくりさん)で遊んでいるなど、内には孤独を秘めていた。
心に闇を抱えていたリーガンとカラス神父だけが、作中で悪魔に”取り憑かれた"。しかしラストでカラス神父が自殺したのも、生来の悪魔祓いと同じく、リーガンに「自分に取り憑け!」ということで彼女の思い込みを排除し、自身もリーガンを救って死ぬことで、母親の死の罪悪感からの救済を求めた・・・とはいえないだろうか。
勿論これはトンデモ解釈であって実際の映画の解釈とは違う。しかし子供の頃見た時は、「どうして悪魔は登場するのに神様は登場しないのか?」が疑問だった。片方だけなんてフェアじゃないように思えて仕方かなったのだ。
だが例え神様が目に見えなくても、悪魔が存在するならば、それは神が存在する唯一の証ともいえるのではないか・・・?
この映画の神の不在の理由は、その辺りにあるのかもしれない。
映画の謎と疑問点
キャプテン・ハウディとは誰か?
「キャプテン・ハウディ」とはリーガンがヴィジャ盤で呼び出した話し相手の名前だが、映画評論家の町山さんによると、ハーディとはリーガンの父親の名前らしい。※1次出典は不明
映画中では「離婚した父親がリーガンの誕生日に連絡を寄越さない」とクリスが怒っているシーンもあり、女優業で忙しい母親が不在の間、リーガンは父親がいない孤独を深めていったのかもしれない。
その心が悪魔を呼び、それが父親の名を騙ったのか。それとも淋しさからリーガンが創り上げた架空の存在なのか・・・。ハウディの解釈は人によって違うのかもしれない。
最初の聖水に反応したのは何故?
最初にふりかけたのはニセの聖水だったのに、悪魔が反応したのは何故なのか?
だがこのシーンの悪魔はよく聞くと、体が焼けるといった後、最後に「濡れたわ~」みたいなセリフを口にしている。本物のエクソシスト(メリン神父)を呼ばれることのないよう、ワザとニセモノの聖水に反応したのではないだろうか。
リーガンの枕元に十字架を入れたのは誰?
映画では明らかにされない謎の一つに、精神科医を襲った後~カラス神父に悪魔祓いをされるまでの間に、クリスがリーガンの枕の下から十字架を発見する。
だが下男のカールはおろか、お手伝いさんのシェロンたちも知らないという。
家に入れる人間でなければ十字架は置けないが、ずっとクリスと暮らしてきた彼らがウソをつく理由もない。またクリスは無神論者なので、家には十字架は置いていない。ならば何故?
可能性の一つとしては、やはり映画監督のバークがあげられる。
神父以外で唯一彼だけが殺されたのは、母親に気があったことをリーガンが気付いており、内心は毛嫌いしていたからだと推測できる。だが、殺した理由はそれだけではなく、もしかしたら彼はリーガンのことを心配してお守り代わりに十字架を忍ばせたことで、悪魔から怒りを買ったのかもしれない。
謎が謎を呼ぶ「TASUKETE!」
カラス神父が録音した悪魔の声を聞いている部屋の上にデカデカと赤文字で「TASUKETE!」と書いてある謎の貼り紙。あまりにも目立つこの文字についてネット上でも話題にはなっているが、結局これが何かの伏線なのか我々日本人へのメッセージなのか、さっぱりわからない。
よく見ると近くに漢字(中国語?)で書かれた貼り紙や、ハングルっぽい文字も見える。またあの部屋は言語学の研究室らしいので、恐らくその関連で、色々な国の言葉が貼ってあっただけなのかもしれない。
実は原作は小説
1971年に書かれた「エクソシスト」という小説が原作。その後小説のヒットを受けて、 作者であるウィリアム・ピーター・ブラッディ自身が映画の脚本も務めている。
最後に
母親から昔、「エクソシストはスタッフやヒロインが撮影後死んで~」みたいな話を聞いたことがありますが、大人になって調べたらリンダさんめっちゃ元気でした。オカン!!(当時は「ポルターガイスト」とかと噂がごっちゃになってたらしい)
基本、キリスト教の他の宗教の神様を悪魔にしちゃうとことか、アメリカのホラー映画にありがちな「結局ぜーんぶ悪魔の仕業でした☆」なオチは萎えちゃうので、あんまり悪魔系の映画って観ないんです。が、この映画は悪魔祓いそのものよりも、悪魔祓いに至るまでの過程が非常に面白い!いやブリッジシーンも面白いですけど!(笑)
13日の金曜日に敢えてこの作品を放送してくれたってのが本当に嬉しいですね!でも逆に、もう金曜ロードショーの時間帯にホラーな映画は放送できないってことでもあるのかな。そう考えると、ちょっと淋しくもありますね。
↓同じく70年代の名作ホラー!