ローカル度 ★★★★★
BGM ★★★★
結論:シリアスな大泉洋はお好きですか?
2003年 日本
監督:ミスター鈴井貴之
※ストーリー、及びエンディングに関するネタバレあり!
「忘れたい記憶はありますか?」
同窓会で出会ったかつての同級生・・・佐々木、藤沢、九重、横井は謎の男から記憶を消せる薬を盗み出して欲しいと頼まれる。後悔、哀しみ、かつての栄光、子供時代の傷跡・・・消したい過去を持つ男4人が再び生まれ故郷に戻る時、何が起こるのか──
/主要人物/
■佐々木耕一(演:大泉洋)
警察官。
銃が嫌いで弾をいつも抜いていたが、それが原因で通り魔を追跡中、人質をとられ取り逃がしてしまう。人質の女性はその後死体で発見される。
■藤沢聡(演:安田顕)
婚約者を通り魔に殺された。取り逃がした警察官を追うため探偵を雇う。何故か着ぐるみで一番キレのある動きを披露し、劇中で褒められるシーンがある。
■九重達也(演:佐藤重幸)
※現:戸次重幸
元スキージャンプの選手。
オリンピックの代表候補だったが、交通事故により右足を負傷。現在はバーの店員をやっている。応援時のコールは「ココノエール」
■横井茂(演:音尾琢真)
小学生の頃イジメにあっていた。
いつも青いシャツを着て青いハンカチを持っている。薬を盗み出す作戦に唯一参加していない。妻子持ちで、車の番号は「4515(ヨコイゴー)」。
■川塚剛志(演:森崎博之)
警察官。佐々木の先輩。
余談だが、森崎さんが被っている警察官の帽子は特注である。(理由はお察し下さい)
オール北海道ロケ!
札幌に住んでいる人ならば、あの場所もこの場所も知っている!!とお祭り騒ぎになること請け合いのロケ地!大通公園~TV塔~さっぽろ地下街、中島公園、札幌伏見稲荷、九重のバーのトイレはサッポロファクトリーのトイレだったりと、見た事ある景色がちらほらと・・・!
札幌以外では、佐々木たちの小学校がある夕張に行くまでの道中に、1作目の映画「man-hole」でも使われた三井グリーランドのあの観覧車が映ったり、薬を盗んで下水道を逃走するシーンで同じく1作目の舞台だった石狩市のマンホールが使われていたりと、man-holeも観ていた人間には嬉しいシーンもたくさん!
ですがロケ地の中でも特に素晴らしいのは、佐々木たちの母校として登場した夕張の廃学校!!20年前の少年時代の回想シーン、そして20年後の廃校として登場したシーン・・・前者は昭和のノスタルジーを、後者は廃校としての魅力を存分に感じさせてくれる、趣があるいい学校でした。(こういう学校がもっとロケ地として再利用されてくれればいいのに・・・!)
やたら存在感があるモブのみなさん
今作は殆どのキャストが北海道在住であり、また東京からのゲストもかつての鈴井さんの劇団仲間だったりと、ほぼ北海道オールキャストで構成されている。
ちょい役からモブに至るまで一瞬たりとも見逃せないので、以下解る限りの範囲でキャスト陣を紹介していきます。
役名あり
■通り魔役(演:川井"J"竜輔)
通称Jくん。かつてシゲさんと一緒にHBCで放送されていたローカル番組「天然者」に出演していた。
■佐藤探偵(演:佐藤誓)
藤沢からは婚約者を見殺しにした警察官を、佐々木からは逃走した通り魔を探すよう、それぞれ依頼された探偵。工藤ちゃんやコナンが好きらしく、やたらキャラが濃い。
本名は不明だが作中「佐藤探偵事務所」と名乗っているシーンがある。(本来この役はミスターが演じる予定だったが、副社長の奥さんにダメって言われたのでこの方になった。英断だったと思う)
■佐々木に惚れるオカマ(演:田中護)
佐々木が電車で横井を追跡中に出会ったオカマ。電車の中で熱い視線を感じ、それがキッカケで佐々木に惚れてしまうこのオカマさんを、かつて「モザイクな夜」という深夜ローカル番組で元気くんというリポーターをやっていた田中さんが演じている。
田中さんが東京で活躍する為に元気くんを引退した際、大泉さんはその後を継ぎ、「モザイクな夜」で二代目・元気くんを担当。ハート型に切り抜いてあるシャツで乳首を晒していた大泉洋の姿をボクは一生忘れることはないだろう。(このことがきっかけで後に伝説となるローカル番組・水曜どうでしょうの出演が決定する)そして今作にて、初代と二代目元気くんの歴史的邂逅がスクリーンで実現することになった。
・・・彼が引退しなかったら、ブルーリボン賞までとった今の大泉さんはなかったかもしれない・・・
■小野優子
HTBアナウンサー。通称おのゆう。
冒頭の佐々木の事件のニュースを取材している。
■演歌歌手(演:滑川宝水)
製薬会社のお祭りで見事な演歌を披露するのは、かつてHTBで放送していた「夕方Don!Don!」の街角サビカラ選手権のコーナーで審査員をしていた演歌歌手の滑川宝水さん。ちなみに司会はヤスケンが担当していた。
その他、不動産屋の役を小橋亜樹ちゃんが、製薬会社の着ぐるみショーに忍び込んだ際、ヤスケンに「ポップでしたよ!」と声をかけるリアクションがデカい社員をオクラホマの河野さんが、着ぐるみをきて逃げるシーンで「チャック開いてるよ」と声をかける影の薄い社員をオクラホマの藤尾さんが担当している。
モブ・ちょい役
■どうでしょうD陣
TVクルーの先頭に、水曜どうでしょうの名物ディレクター・ふじやんこと藤村忠寿さんがいる。ちょっとだけ喋っている。その後ろでおのゆうと仲良く談笑しているのが、どうでしょうのカメラマン・うれしーこと嬉野雅道さんである。
因みに、メイキングビデオのナレーションも藤やんが担当。相変わらずプロ顔負けの喋りの上手さが光る。
■佐藤麻美(HTBアナウンサー)*1
佐々木が地下街で、群衆をかいくぐり犯人(Jさん)を追うシーンで、一人だけタンクトップを着て、画面中央ぐらいから明らかに佐々木の方に向かって不自然に斜めに横切るモブが彼女。監督もチェックの時に気付いたらしい。
■医師(演:山野久治)
演じている山野さんは役者でもあるが、普段は車両(つまり運転手)も担当している。
■ゲーセンで佐々木を見ている男性
このモブは熊ちゃんというマネージャーが担当。誰がわかるというのだこんなん。
演出(カメラワーク・色)について
シリアスな雰囲気に合わせ、映像は常にくすんだ暗い色合いとなっている。また、視線を意識したカメラワークになっており、固定されている画ではなく、目の動きに合わせて画面もリアルに揺れる。この録り方がかなり好きだった。
他、鮭というキーワード(稚魚の放流=社会に出る、そして故郷に戻るという事が死を意味するという暗喩)や、ノグチユミコさんのイラストなど小道具の使い方もうまく、また、色を効果的に使っているのが印象深い。
赤はメインビジュアルのロゴの色、黄色は警戒色として使われ、バーのシーンや製薬会社に盗みに入るシーンでさりげなく使われている。また白は(横井とは別の意味で)潔癖な佐々木を象徴する色だったりする。(だから劇中でソフトクリーム食べてたり牛乳を飲んでたり、トイレットペーパーが使うシーンが挟まれたりする)
特に青は今作では横井を象徴する色として、不安を誘うシーンにちょこちょこと使われており、横井が殺戮を開始する小学校のシーンでは全体的に暗く青みがかった画となっている。(そういえば普通、「青」の反対といえば普通「赤」を連想するが、横井と対比する存在の佐々木の象徴は「白」というのもなかなか興味深いかも)
秀逸なBGM
riverの音楽は佐々木秀夫さんというDJの方が担当しており、ラジオなどで鈴井さんが語るに、映像を見ながら直接音を作って当てるという手法だったらしい。凄ぇ!
序盤の不安を誘うBGMに始まり、徐々にスピード感を増す展開に合わせサウンドも変化。最終局面の、廃校で横井が藤沢を追い詰めるシーンのBGMは、藤沢の恐怖をより鮮烈に視聴者に植えつける役割を担っている。
他、主題歌を担当した太陽族の歌声も素晴らしかった!映画自体はシリアスで重いのだが、逆に太陽族のパワフルな歌声が映画にしっくりきた。劇中の挿入歌「今日の日はさようなら」もいいが、やはりエンディングの「戦友」の力強い歌声、そして歌詞が、劇場で観ていた当時、スタッフロールが終わるその時まで惹きつけてくれたことをよく覚えている。
横井の考察
この映画は、
かつてイジメられていた横井が、自分をイジメていたクラスメイト、そして自分を見捨てた友人たちに復讐するという彼の復讐劇でもあり、もう一人の主人公は横井とすら言えます。一体彼はどこまで関与していたのか、佐々木の事件を仕組んだのは彼なのか、婚約者に何かしたのか、九重の事故は本当に事故なのか・・・。勝手な考察ですが、婚約者は冒頭のニュースで「友達と食事中具合が悪くなり、一人外へ出て、いつもはよらない公園へ行った」とあることから、食事に何か盛られたような気がしてなりません。(実際横井は、イジメっ子の主犯格は医療ミスや居眠り運転に見せかけて殺しています)佐々木の偽善的な性格を知っていた横井は「佐々木が人殺しになってまで誰かを救うことはない」と確信していたのかも。
九重のことも単なる事故ではなく、最初から最後まで全て仕組まれていたんじゃないか、そう思います。
ラストに撃たれたのは誰か
ラスト、横井から羽交い絞めにされた佐々木。目の前の藤沢は、自分の婚約者を見殺しにした警察官が佐々木だと気付き、横井の銃を拾い、その銃口を佐々木に向けます。
そして響いた銃声は一発。
果たして、藤沢は誰を撃ったのか?
佐々木は殺されてしまったのか、それとも撃ったは横井だったのか。佐々木を見殺しにしたのなら、横井はどうなったのか・・・疑問は尽きることはありません。このラストだけは各々で想像して欲しい、ということなんでしょう。
ただ、この映画の本当のラストカットである、佐々木の彼女(演:中村麻美)が描いた親子3人のイラストは、真っ青な空に包まれていました。(そういえば、佐々木の子供がいると解った時、病院で着ていた服も青なんですよね・・・)青という色がこの映画でどんな使われ方をしているか考えると──このカットを唯一の希望とみるか、それとも救いようのない絶望とみるか・・・分かれそうですね。
笑いは副音声で!
本編はどシリアスな分、バラエティな彼らは副音声で堪能できます!殺伐とした空気はどこへやら、ナックスの5人+ミスターの和気藹々とした雑談は一聴の価値アリ!一番痛そうなシゲさんのシーン(首をナイフでざっくり)で大泉さんが「シゲが可哀想だね」と発言していたり(昔シゲさんが死んだ夢を見て泣いたらしい)、大学生の頃からの付き合いの、30代の彼らの仲良し会話をたっぷり聞けます!
当時の思い出
鈴井貴之第2回監督作品『river』DVD | オフィスキューオンラインショップ CUEPRO[キュープロ]
↑映画のDVDはオフィスCUE公式HPから購入できます!
北海道ローカルということで、初日のレイトショーに行ったり、白石の映画館に5回見に行ったり、限定のウィズユーカード持ってたりと、あんなにいっぱい同じ映画見たのは始めてでした。唯一の心残りはサントラが発売されなかったこと。riverの音楽めっちゃ好きなのに・・・今からでも出してくれてもいいのよマジで。
↑こちらのアルバムには太陽族の歌う主題歌「戦友」が収録されています!
【最後に!】
つっこもうと思えばいくらでもつっこめるので、ストーリーの出来はかなり甘いものの、テンポの良さや映像や音楽の演出、これでもかと詰め込まれたローカルネタ、バラエティ全盛期だったナックスのシリアスな芝居など見所は盛り沢山!当時北海道在住だった自分は本当にこの映画に楽しませてもらいました!この時買ったパンフレットは一生の宝物です!
映画本編しか見た事がない・・・という方はぜひ!副音声も聞いてみてください!(笑)
↓ガヤがほぼナックス!
*1:最初はコンビニタイアップ企画ものだったのに、いつしかただの大食い番組と化したローカル番組・おにぎりあたためますかに出演しているアナウンサー。