恐怖度 ★★★★
ストーリー ★★★★
結論:見てるだけで足が痛ぇ!!
1990年 アメリカ
監督:ロブ・ライナー
※あらすじ、ラストのオチのネタバレあり!
※感想だけを読みたい人は目次ですっ飛ばしてください。
目次
ストーリー
作家のポールは、自身のベストセラー「ミザリーシリーズ」の最終作の原稿を運ぶ途中
吹雪で交通事故に遭うが、近所に住む女性・アニーに助けられ一命をとりとめる。
元看護婦という彼女から手厚い看病を受けるポールだが、実はアニーは「ミザリー」の熱烈なファンであった。
しかし、最終作でミザリーが死ぬことを知り激怒した彼女はケガで動けないポールを監禁し、ミザリーを生き返らせ、新作を書くように強要する。果たしてポールは、彼女の元から逃げ出す事ができるのか・・・?
主要人物
ポール・シェルダン(演:ジェームズ・カーン)
作家。
マサチューセッツ生まれの45歳。
ミザリー(悲惨、不幸)という名前を持つ女性が主人公のロマンス小説「ミザリー・シリーズ」が代表作。だがシリーズの余りの人気ぶりに新作が書けないことに悩み、ミザリーを死なせ、作品に終止符を打つことを決意する。
原稿のコピーはとらない、普段は禁煙しているが原稿が完成した時は1本だけタバコを吸う、など作家らしく様々な拘りがある。
非常に忍耐強い性格で、作中ではアニーの異常さを目の当たりにしながらも彼女を刺激しないよう、言葉を荒げる場面はラストまでなかった。また、こっそり拾ったヘアピンで鍵を開けてちょこちょこ抜け出したり、1ヶ月ものあいだ彼女の言う事を聞いて作品を書くフリをしながら、脱出のための体力作りに部屋でタイプライターを持ち上げるなど準備を怠らなかった。しかしツメは甘い。
作中ではアニーを眠らせようと飲まずにとっておいた自分用の薬を彼女のワインに混ぜるも失敗し、「ミザリーに乾杯」「あぁ、ミザリー(惨め)に」というやりとりがある。
作中の「ミザリーシリーズ」とは
映画では詳細な描写はないが、女主人公のミザリーにイアンという恋人未満らしき男がいることと、ミザリーを巡る恋敵のウィンドソーンという人物がいることがセリフからわかる。
しかしアニーに無理やり続きを書かされ、死んだことにしたミザリーを生き返らせる際には、「彼女はハチに刺されて生きたまま仮死状態になり埋葬されていた」というトンデモ設定になっていた。何者だよミザリー!?
アニー・ウィルクス(演:キャシー・ベイツ)
ポールを助けた女性。
たまに勘違いされるがタイトルの「ミザリー」は彼女の名前ではなく、彼女が好きな作品の題名である。
見た目はガタイのいい小綺麗なおばちゃん。事故に遭ったポールを一人で自分の家までおんぶして運ぶなど相当な力持ち。元看護婦で救急病棟にいたこともあり、応急手当や薬などの知識が非常に豊富。家には大量の薬や鎮静剤が常備してあり、そのおかげでポールは助かったのだが・・・。
当初は親切に接していたが、何か気に喰わないことがあるといきなり怒鳴りだすなど病的なまでに癇癪もち。一応本人にもその自覚はあり、そのせいで人から好かれることはなかったらしい(夫はいたが先立たれている)。
序盤はそれでも均衡を保っていたが、ミザリーの死を知ったことで完全に暴走。手が付けられなくなるほどに暴れ、ポールを発見してから誰にも連絡していないこと、自分に何かあったらアンタも死ぬと脅すなど凶暴性があらわになり、ポールの周囲にガソリンをぶちまけながらミザリーの最終作を自分で燃やすように脅迫し、自分好みの展開にならなければ作品を書き直させるなど異常なほどミザリーに執着しだす。
とにかくキャシー・ベイツの無邪気な少女の様な表情と、人が変わったようにブチギレる時のギャップが素晴らしく、とくにポールが部屋を抜け出していたことに気付いた時に、彼女が嬉々としてポールの両足をハンマーで叩き折るシーンは、ポール役のジェームズの痛々しそうな演技も相まってトラウマ必死である。
その他の登場人物
■バスター保安官(演:リチャード・ファーンズワース)
シルヴァー・クリークの保安官。
今作の名探偵。
田舎町のおじいちゃん保安官だが、ポール失踪の可能性に気付き、彼を探し続ける。
雪が溶け事故った車を発見した時も、警察が「ポールが自分で這い出たあとすでに死亡している」という見解を述べたのに対し、外からこじ開けられた傷があることからポールの生存を信じ、探し続けてくれた。
なかなかポールが見つからず、代わりにと本屋で「ミザリーシリーズ」を買った際、どうやら相当ハマったらしく、主人公のセリフである『人間の正義を超越した正義。私はそれに従います』というセリフをメモっていた。が、そのセリフがアニーの裁判記事に載っていたことから、彼女がポール失踪事件と関わっていると考え家を訪問する。
彼女の家をさりげなく見て周り、ココアに一口も口をつげずおいとまするも、地下室に隠されていたポールの声に気付き、助けようとする。が、アニーに猟銃で撃たれ殺害されてしまった。なんでハロランといい、キング映画で助けにくるいい人はすぐ死んでしまうん・・・?
■ヴァージニア
バスターの奥さんで、保安官補佐も務める。
ドライブ中に旦那の太ももをナデナデして誘ったりと、お盛ん。
■ブタ
アニーのペット。人懐っこくて可愛い。
名前はミザリーだが、紹介すると「雌ブタのミザリー」になっちゃう。いいのか本当にそれで。
結末は?
自分を助けにきた保安官を目の前で殺されてしまったポール。
銃を持ち心中を迫るアニーに、「ミザリーに僕達の手で永遠の命を与えよう。そのあと二人で死のう」と、時間稼ぎをする。
最終章を書き終えると、自分の作品が出来上がったときのお約束の3つのアイテム、タバコ、マッチ、シャンパンを用意させる。そしてアニーが目を離している隙に、地下室に閉じ込められた時に発見したガソリンを使い、アニーの目の前で、かつて彼女が自分にやらせたように原稿に火をつける。
絶叫して原稿の火を消そうとするアニー。
その上からタイプライターを全力で振りおろし、脱出しようとするポール。激しく揉みあいながら、目潰しと見事な掌打を食らわせアニーをふっ飛ばし、銃で肩を撃たれながらも燃えた原稿をアニーの口にめいっぱい詰め込む。容赦ねぇな!金的を喰らうも、最後はブタの置物でトドメを刺した。
それから18ヵ月後
無事救助されたポールは、杖ありながらも歩けるようになるまで回復。新作の「高等教育」の評判も上々だった。この作品が書けたのも、ある意味でアニーとの日々のおかげだと編集者に語るポール。だが「あの体験を記事にしたら?」という言葉にはうなずかない。
彼の目には通り過ぎる人がアニーに映るほど、いまだ恐怖は消えていなかった・・・
狂気のファン、アニー
理性と狂気を内に秘めたヒロイン(?)
自分で自分を抑えられないなど確実に病んではいるが、小さなペンギンの置物の向きでポールの脱走を見破るなど神経質で、鋭い観察眼の持ち主でもある。また、保安官が尋ねてきた時には自分が疑われていることを即座に見抜き、咄嗟に最もらしいウソをつくなど実に狡猾。学生のころは頭脳の優秀さで表彰もされ、看護師長になるなど腕も確かであり、本当に性格以外では総じて優秀。
躊躇なく殺人を犯す異常者ではあるが、徐々にポール自身にも愛情を持っていたらしく、本が完成に近づき足が治っていくにつれて、このままポールが出ていってしまうことを悲観し心中しようとするなど、昨今ならヤンデレと称されそうな勢いである。
アニーの過去~殺人遍歴
ポールが脱走した時に発見した「思い出のアルバム」には、彼女が過去に犯した犯罪を報じた新聞記事がまとめらている。それによると、
・銀行員の父親、カール・ウィルクスが転落死(付箋のメモには「with love to Dad on Father's Day」とある)
・看護学校の優等生・リサが転落死(左ページには人形をとりあう2人の子供のイラストが張られている。その後、アニーが優等で卒業)
・アニー、救急病棟の看護師長に昇進
・小児科部長が急死(記事によるとドライブ中の事故っぽい?右ページには「in remembrance」=記念という文字と、アニーが産科病棟の看護師長になったという記事がある)
・アニーが婦長になった途端、乳児が二人連続して死亡
・アニー、無罪を主張するも逮捕される
と、もう完全にアウトな情報が羅列されている。
劇中で働いている様子がないのに、タイプライターや車椅子を購入できるほど裕福なのは、父親が裕福でその遺産があるから?経歴を見る限り、ジャマになりそうな人間は片っ端から殺しているので、天性の犯罪者のようにもみえる。
父親はどうやら彼女が11歳の時に死んだらしく、通報したのもアニーのようなので、おそらくは彼女に殺されたんだと思われる。もしかしたら父親から虐待されていて、あのようなヒステリックな性格になったのかもしれない。
もしこの事件をきっかけに「ジャマな人間は殺してしまえばいい」と、思い通りにならない人間を殺すようになったのなら、アニーは天性のサイコパスとは少し違うのかも?雨の日に欝状態になるのも、父親の事件と何か関係があるのかもしれない。
気になるのはアニーの夫の死因。
この思い出のアルバム内に記事がないっぽいことから、彼女が殺したわけではなく、病死か事故だったのだろうか。気になるところである。
日本語吹き替え版は2種類!
現在日本語吹き替え版は2種類。
ひとつはDr.スランプアラレちゃん役でお馴染みの小山茉美さんがアニーを担当しているもの。こちらは1998年にピクチャーズエンターテイメントから発売されたVHS、及び旧DVD版にのみ収録されている。古いものなので画質は落ちるが、新しいバージョンとは違い、こちらは完全な日本語吹き替え版となっているのが特徴。
2つ目が2000年以降に発売されたDVD版。キャストはアニーが藤田弓子さん。ポールが有川博さんとなっている。こちらは画質が良くなっているが、日テレ放送時の吹き替えなのでところどころ日本語が収録されていないシーンがある。自分の好みで選ぼう。
最後に!
切り株のようにスッポーンと景気よく首が吹っ飛ぶとかだとかえって現実感がなく気楽に観れますが、この作品はポールの痛々しさがほんとリアルで、観てるこっちも「いってぇぇ───!!」ってなります。ハンマーのシーンはまじでトラウマ。
そして10年ほど前になりますが、新宿シアターアプルに渡辺えり子さんと小日向文世さんの二人芝居「ミザリー」を見に行った事があります。この時のストーリーは小説版を基にしていたので、あの斧で足を切断するシーンが再現されていた記憶が・・・。舞台でもすっごく怖かったなあ。映画は原作よりグロ度は抑えめなものの、両足と片腕が使えないポールとの絶妙な心理戦や、スリル満点な展開、キャシー演じるアニーの狂気溢れる圧巻の演技など、今みても面白いと思える作品です。
・・・むしろ、昔よりもファンとの距離が近い今の方が、この作品を「身近な恐怖」と実感できちゃうのかもしれないですね。
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