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【映画】怪談新耳袋 劇場版 感想 ネタバレ 原作解説あり~オムニバスホラーの決定版!あなたは怖い話、お好きですか?

怪談新耳袋 劇場版 [DVD]
今宵語られる8つの怖い話。
ビルで、山で、学校で──
恐怖はいつも、あなたの隣に。

幽霊のヴィジュアル ★★★★★
恐怖度 ★★★★ 
カズノリさん はいっ!!
結論:TVドラマ版、再放送しないかなぁ・・・

2004年 日本
原作:木原浩勝
   中山市朗

大人気オムニバスホラー「怪談新耳袋」の劇場版!
TVドラマ版や原作(新耳袋)との相違点も含めた感想・解説です。
※原作・TVドラマ版・劇場版のラストのオチ含めたネタバレあり。ご注意下さい!

夜警の報告書

出演:竹中直人
   林泰文

あらすじ
とある廃ビルの夜間警備の会社では、「異常なし。ただし女性1名」といった奇怪な報告書が毎夜あげられていた。最初はイタズラだと思っていたが、働いていた新人警備員が辞めてしまい、その穴を埋めに入ったベテラン警備員すら「幽霊がでた」と言って辞めてしまう。司令補(竹中直人)は仕方なくその廃ビルでずっと働いている警備員(林泰文)と共に深夜の見回りへと赴くが──

感想
劇場版1番手は怖い系。わんさか出てくる幽霊に怖さが半減の人もいるかもしれないが、この作品は幽霊より、何があっても「気のせいですよ、気のせい!」と言い切ってしまう林泰文さん演じる警備員が一番怖い。実際に見えているのにあんなひょうひょうとした態度でいられるってどんだけ心臓が強いんだ!カップラーメン喰ってる最中にずっと幽霊からガン見されてるのに平然としている・・・もうこの人の存在がホラー。そんな不気味な警備員を淡々と軽いノリで演じた林さん、まさにハマり役だった!

原作
幽霊が見えても平然としている警備員の話は、新耳袋 第九夜の九十五話「迎賓館その一」が元となっている。実際は廃ビルではなく、歴史ある迎賓館の工事現場が舞台。警備員が話す内容や上司とのやりとりはそれほど変化は無い。因みに話に出てくる警備員は工事が終わるまで3年間、たった一人で夜間警備の仕事をやり遂げたらしい。オリジナルは格が違った。
他にも九十一話と九十二話は警備会社が舞台の怪談になっているが、こちらにはそれぞれ電話にいないはずの女性の声が入っているエピソード報告書にいないはずの人間が記載されるというエピソードが載っているので、映画版のストーリーはこれらの警備会社の怪談シリーズを総合し作られたものだと思われる。

残煙

監督:鈴木浩介

あらすじ
会社の宴会を抜け出し、鬱蒼とした山中をドライブ中のOL3人組。だが、途中で道に迷ってしまう。山道を辿り、小さな神社の様な場所にたどり着いた3人はそこで一服するが、周囲には怪しい気配が満ち始め・・・

感想
恐らく一番怖くない作品。一人ずつ消されていくという話なのだが、この人が消えていくCG?がちゃっちぃ・・・。原作では神隠しの正体について一切触れられていないが、今回は風の音に混じって羽ばたきの様な音が聴こえるので、怪しい気配の正体が天狗だと簡単に想像出来てしまうことが恐怖を半減させてしまっている。最後に全員が消えてしまう、というラストにも嘘臭さを感じてしまった。

しかし「私、結婚するんだ・・・」みたいな話をした人から真っ先に消えたという事は、天狗はリア充に何か恨みでもあったのかも知れない。

原作
新耳袋 第七夜の五十七話「残煙」が元となっている。
勿論原作では消えたのは煙草を吸っていた一人だけで、他の二人は消えていない。また「人が消えていった」ところは同じだが、それ以外の怪奇現象は起きていない。原作ではタイトルの「タバコの煙」が重要な意味を持っており、映像よりは文章で読んだ方が面白さが伝わるかも。また映画版で神隠しをする「何か」が天狗っぽい演出になっているのは、原作の残煙の舞台が「天狗神社」であることに由来すると思われる。
こちらもTVドラマシリーズにはなっていない。

手袋

主演:高岡早紀

あらすじ
ある日、結婚まで考えていた元恋人の男がやってくる。家に泊めて欲しいといわれ一晩だけ了承するが、何故かその日から毎夜、首を絞められる夢を見るようになる──

感想
白い手袋部分だけが首を絞めてくる、という話なのだが・・・いかんせん手袋のCGが古臭い。ただ全体的に古いドラマのような雰囲気で作られている作品なので、敢えてそういう演出にしているのかもしれない。

女癖の悪い元カレが現在付き合ってる女とトラブったおかげで、その女が生霊になってまで首を毎夜絞めにくるというストーリーだが、逆恨みもいいとこである。最後は元カレが折れたのか、トラブった女と結婚したおかげで主人公は首締めからは解放される。・・・嫉妬から生霊飛ばしちゃうような女と結婚したって絶対うまくいかないだろうな・・・

原作
新耳袋 第八夜の七十話「手袋」が元。
映画だけでは今イチわかりにくかった「元カレが主人公に会いに来る夢を見ている」という描写は、原作にある「元カレの生霊?が毎夜主人公のベッドに現れる」というエピソードからくるもの(ただし元カレの生霊は隣で寝てるだけ)。また映画では手袋だけしか出てこなかったが、原作では最初からウェディングドレスも見えており、顔も誰だか判別できるほどしっかり見えている。オチは同じ。こちらもTVドラマシリーズにはなっていない。

重いッ!

出演:北村一輝

あらすじ
子供と寝ていた母親が突然見えない「重いもの」に伸しかかられる。必死に抵抗し、見えない何かをどかすも、突如両手をつかまれて──

感想
北村一輝さんが超怖い。
「ニヤ~ッ」と笑った顔がトラウマになりそう。ストーリーも何故こうなったのか、男は誰なのか・・・といった説明は一切なく、理不尽さが徹底していてそれが怖さを際立たせている。子供にも容赦なく伸しかかる男を止めようとする瞬間に終わる為、その後の結末が描かれない。それもまた怖い。

原作
新耳袋 第四夜の六十五話「重いーっ!」が元。
こちらは男の幽霊などは一切登場しないので、珍しく原作の方が怖くない。
また映画はTVドラマ版の第3シリーズ「花嫁さん編」の第39話をそのまま使用している。

姿見

監督:三宅隆太

あらすじ
卒業を間近に控えた男子高校生二人組。最後の思い出にと体育館でバスケに興じていた最中、用具倉庫にある鏡の"ウワサ"を確かめようとするが──

感想
びっくり系ホラー。初見だと高校生と同じ「ぅううわぁっ!」って声がでるかも。一番ショートホラーらしい話。絶妙なタイミングでつっこんでくる幽霊のヴィジュアルや恐怖描写はなかなか。「重い」もそうだが、ホラーらしく唐突に終わる話が個人的に好き。

余談だがこの話に登場する白い老婆のような幽霊のそっくりさん(?)は「呪怨 白い老女」にも登場する。

原作
新耳袋 第八夜の六十八話「姿見」が元。共通点は「姿見」が登場することのみで、その他の設定は異なる。また原作では幽霊は姿見の中から出てくるのではなく、最後に姿見に戻っていく。

視線

主演:堀北真希

あらすじ
10年後、どうなりたいか──「将来の夢」というテーマでビデオを録っていた高校生のゆかり。だがそのビデオには看護婦の幽霊が映りこんでしまっていた。しかし幽霊ビデオは周囲の評判を呼び、文化祭で上映することになってしまう。だがビデオを流すたび、徐々に以前と映像が変わっていき──

感想
劇場版の中でもかなり評価が高く、そして断トツに怖い作品。ストーリー自体は「ビデオに映った幽霊が見る度にどんどん近づいてくる」という怪談ではありきたりなものだが、登場する看護婦の幽霊の目力がヤバ過ぎる。目をかっぴらいたまま画面アップになるシーンはまさに「こっちくんな」状態。「ずぅ~~とみていてあげるぅぅう」という喋り方もめっちゃ怖いが、声は案外高くてちょっと可愛い・・・かも。

原作
同名の原作はない。が、新耳袋 第一夜の五十四話「8ミリ・フィルムの中の子供」の「映画を作っている最中に幽霊が映り、それを周囲が面白がって見たがるので上映しているうちに、始めは横顔だった幽霊の顔が正面を向いてきていることに気付く」というストーリーが映画版と酷似しているので、この作品が元ネタかもしれない。

約束

監督:雨宮慶太

あらすじ
親戚のおじさんが出張のため家を空けるので、その間部屋に住まわせてもらうことになった主人公。だがおじさんから一つだけ、奇妙な約束をされる。
それは「名前を呼ばれたら返事をしろ」というものだった──

感想
その部屋にいると1日1回、必ず女の声で「カズノリさん」と呼ばれる。その声は部屋の主にしか聞こえず、返事をしなければ何回も呼びかけられてしまう・・・というストーリーで、最初は様々なシチュエーション(トイレ中とかお風呂中とか)でいきなり呼びかけられては「はい!」と応えるというコミカルな展開だが、終盤登場する女の幽霊のヴィジュアルに度肝を抜かれる作品。
何せ劇場版のこの幽霊、雨宮監督の本気デザインなので力の入りようが半端ない。ヴィジュアルのインパクトなら先ほどの看護婦以上。でもよくよく見たらくまのぬいぐるみとか持ってるから、案外この女幽霊は乙女なのかもしれない。身長2m軽く超えてるけどね!!

原作のストーリーが秀逸なので映画版の「女の子を連れ込むと怒る(?)」という追加要素は余計だったかもしれない。

原作
新耳袋 第八夜の六十九話「約束」が元。ストーリーは大筋変わらないが、女の幽霊が「物凄い美人」という設定は変更されている。(天井に頭がつくほど背が高いという設定は一緒)

ヒサオ

主演:烏丸せつこ

あらすじ
「晩御飯何がいい?」「学校はどう?」ありきたりな母と息子の会話──だが、聞こえてくるのは母親の声ばかりで・・・

感想
ラストを飾るのは怖いというより切ない系の話。こういった話で締めるのは同じくオムニバス形式のドラマ「世にも奇妙な物語」でも共通。
姿の見えない息子に延々と話しかけ、最初は穏やかに話しながらも、徐々にヒステリックになっていく過程を、烏丸さんが丁寧な一人芝居で魅せてくれる。息子は既に池で溺れて死んでいるため、家中あちこちで水が滴っているという演出があるが、これが終盤の、息子を殺した同級生が事故死したニュースを見た母親が「ヒサオと一緒に逝く」といって自殺してしまう瞬間に、息子の遺影にまるで涙の様に水が流れる・・・というシーンで効いている。切ない系とは言いつつ、誰も救われないという点ではこの映画の中で一番後味が悪い話でもある。

原作
新耳袋 第八夜の九十五話「溺死」~第九十九話「四十九日」までが元ネタ。
5話に渡ってヒサオの姉の視点から語られている。映画版ではヒサオは殆ど姿を見せないが、原作では家族の前に次々に姿を表していく。同級生の事故死までは一緒だが、当然誰も自殺したりはしていない。

怪談新耳袋 劇場版 [DVD]

怪談新耳袋 劇場版 [DVD]

 

~こんな人にはオススメできません~
■怪談が怖くない人
オムニバス形式の映画なので、怖い話もあればそうじゃない話もある。怪談が好きじゃない人はこの映画は厳しいかもしれない。

最後に

現在、原作の新耳袋は文庫版になっています。100話全部読むと何かが起こるといわれていて、そのため99話ずつ怪談が収録されています。もし一晩で一気に読んだら、あなたの身にも怪奇現象が起きるかも?

誰かが語っているからこそ、怪談は面白いのです!映画が面白かったという方はぜひ一度、本で読んでみることもオススメします。ただでさえ寒い今時期、もっと寒くなりますよー!

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