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【映画】MAMA ネタバレ感想~ギレルモデルトロが紡ぐ、恐ろしくも切ない母の愛の物語。

MAMA [DVD]
恐怖度 ★★★
切なさ ★★★★
結論:ラストの選択は、せつない。

2013年 スペイン・カナダ
製作総指揮
ギレルモ・デル・トロ

※ラストのネタバレあり。未視聴の方はご注意!※

目次

ストーリー

投資仲介会社を経営していたジェフリー。だが精神を病んでしまった彼は、同僚のローラとアルバート、さらに別居中の妻を殺害。そのまま幼い2人の娘、ヴィクトリアとリリーを連れて逃走するが、スリップ事故を起こしてしまう。森深くにある山小屋に辿りついたジェフリーは娘たちと心中を試みるが、とつぜん何かに襲われ、姿を消す。
残されてしまった姉妹。だがそこには、彼女たちにサクランボの実を渡す『誰か』がいた・・・。

登場人物

■ジェフリー(吹:桐本琢也)
ヴィクトリアとリリーの父親。
仕事のストレスによるものなのか精神を病み薬を服用していた(ニュースによればその年は株の大暴落があり、その余波を受けてか経営難に見舞われたのだと思われる)。殺人に手を染めたのち、「ヘルベチア(スイスの古名)」と書かれた山小屋で娘と心中を試みるも黒い影に襲われ、消息不明に。

■ルーカス(吹:桐本琢也)
ジェフリーの弟。職業はイラストレーター。
人を雇い、全財産をはたいて5年間も兄とその子供たちを探し続けていた。兄とそっくりの容姿だったことでヴィクトリアに「パパ」と呼ばれ懐かれ、引き取ることを決意する。が、娘たちを預かって数日後に黒い影に襲われ階段から落下、病院送りとなる。入院中は夢に兄が現れ、「娘たちを救ってくれ」とメッセージを受け取る。いきなりビクンビクンしだした時は死んだかと思った。

演者はニコライ・コスター=ワルドー。ルーカスと兄のジェフリー、一人二役を演じている。

■アナベル(吹:魏涼子)
ルーカスの恋人。
ロックバンドのベーシストで子供に興味はないが、ルーカスのことは愛している。
ルーカスきっての願いでヴィクトリアたちを引き取ることになり、渋々面倒を見ることに。しかしルーカスが入院し3人での暮らしがはじまると、様々な怪異に見舞われることとなる。

口も悪く家庭的な性格ではないが、泣いている人間をみると必ず声をかけるなど根は優しい。当初は子供の接し方がわからずにいたが、徐々に愛情を抱きはじめる。

■ドレイファス博士(吹:菅生隆之)
ヴィクトリアのカウンセリングを担当している博士。
当初はヴィクトリアたちが話す「MAMA」の存在を空想上の存在として扱い、自らの研究対象を失いたくないという理由から、貧しいルーカスが養父になれるよう研究施設に使っていた館を無料で貸しだす。

だがヴィクトリアと対話するうちに「MAMA」の存在に気付きはじめ、最終的に彼女の正体に辿りつくも、返り討ちにあってしまった。

■ルイーズ
クリフトン・フォージ公文書館員。
ドレイファスの依頼により、山小屋周辺の精神病院の調査を担当していた老女。彼女のおかげで「あやまち」が入った箱が見つかる。

■ジーン叔母さん
神経質そうな初老の女性。
ジェフリーが殺した妻は彼女の姪にあたる。
ルーカスが娘を預かろうとするやいなや、探しもしていなかったのに「自分が娘たちを預かる」と頑なに反対してきた。さらにヴィクトリアたちに面会にきた際、アナベルが虐待をしているとやっかみのような疑いをかけ、証拠を手に入れようと家に侵入してきたところを、MAMAに体を乗っ取られ利用される。その後はミイラのような姿となって死亡した。

人間の悪役だが、自分の親族を殺した男と瓜二つであるルーカスに、子供を渡したくなかったのかもしれない。

■ヴィクトリア(吹:清水理沙)
ジェフリーの長女。
連れ去られた時は3歳で、メガネをかけなければ目の前にいる人間の顔もよく見えないほどの極度の近視だった。心中前に父親が眼鏡を預かってしまったため、周囲がよく見えない極限状態で妹と暮らしており、発見された時は姉妹そろってガリガリに痩せ言葉を話すこともなく、野生動物と変わらない姿になっていた。

保護されてからはメガネを与えられ、顔を認識できるようになったことでルーカスに懐く。また妹とは違いある程度言葉を覚えていたことで回復が早く、会話ができるようになるなど社交性を取り戻していった。

彼女が言うには、山小屋で5年間「MAMA」と一緒にいたというが・・・

■リリー(吹:佐藤美由希)
ヴィクトリアの妹。
この映画のビックリポイントの大半を担う。

姉より幼かった為か回復が遅く、ベッドの下(暗闇)で寝る、人に触られるのを嫌がる、靴をはかない。すぐに四つん這いで歩く、食事も基本手づかみ、を食べるなど動物のような行動をする。(オープニングで登場した絵ではヴィクトリアが2本足で立った状態で描かれているのに対し、リリーは四つん這い姿で描かれている。ただしリリーが血を吐いた絵→ヴィクトリアの泣き顔の絵が描かれた後は、ヴィクトリアも四つん這い姿となって獣を食べている)

姉とは違い殆ど言葉を話さず、唯一話す言葉が「MAMA」「ヴィクトリア」「来て」。時折部屋では、まるで誰かに遊んでもらっているようなリリーの笑い声が聞こえるが・・・。

アナベルにもなかなか懐かなかったが、冷えた体や手を温めてくれたことで、少しだけ心を開くようになる。

MAMA(演:ハビエル・ボテット)

黒い影のような姿をした女性。
山小屋で父親を殺し、ヴィクトリアとリリーにさくらんぼを与え育てていた。狼?に襲われていたリリーを助けたり、彼女たちに木で人形を作ったり、山小屋の屋根の上に乗せて遊んであげたりと面倒をみており、自分のことを「MAMA」と呼ばせている。

子供への執着が凄まじく、子を奪おうとする人間は容赦なく殺してしまう。また、子供が自分以外に愛情を注いでいると激しく嫉妬する。が、ヴィクトリアとリリーのお願いなら聞いてくれることもある。(終盤ルーカスとアナベルを殺さなかったのは「2人を殺さない」という約束をしていたから)

ちなみに演者のバビエルさんは男性。
ガリガリな容姿からよくゾンビなどのモンスター役を担当しており、RECや死霊館、クリムゾン・ピークにも出演してる。

正体は?

「昔女の人が、心の病気で入院したけど逃げ出した。赤ちゃんと一緒に。で湖に飛び込んだ」

・・・ヴィクトリアやアナベルに夢を通して自分の過去を伝えていた「MAMA」。彼女の正体はイーディス・ブレナンという女性。1878年に閉鎖されたクリフトン・フォージの精神病院に入院していた。

心を病んでいたイーディス。
シスターを刺殺し赤ん坊をさらうも追い詰められ、赤ん坊とともに湖に身を投げた。が、水に落ちたのは彼女だけ・・・。

実は途中で赤ん坊は木にひっかかり、湖には一人で沈んでしまったのだ(その赤ん坊の遺体は地元警察が発見し、病院に預けられ、埋葬されることもなく保管庫で管理されていた)。それに気付いていないイーディスは怨霊と化したあとも赤ん坊を探し森をさまよい続け、そしてリリーたちを見つけることになる。

遺体が湖に沈んでいるせいか、長い髪が常にふわふわと漂い浮いている。顔も手足もガリガリに痩せているが、写真を見る限り生前からのようだ。

ラスト

ヴィクトリアとリリーを連れ、永遠に一緒にいるために連れて逝こうとするイーディス。だが博士の調査品から見つけた赤ん坊の遺体をアナベルから渡された時は人間の姿に戻っていた。

しかしリリーの「ママ!」と呼ぶ声で再び異形の姿に。赤ん坊の遺体を投げ捨てルーカスとアナベルを襲う。

ヴィクトリアは2人を助ける代わりに一緒に死のうとしていたが、アナベルの必死の説得で生きることを選択。イーディスは「ありがとうママ。大好き」と告げるヴィクトリアをおいて、最期まで一緒にいることを選んだリリーのみ連れ、消え去った。

本当の家族とは何か

赤ん坊を探してたんだから納得しろよぉぉ!!
てか捨てんなよ赤ん坊を!!何十年も探してたのになんなんだその潔さは!!

「私は新しい恋に生きる!過去なんか振り返らねぇ!!」的なノリで豪快に赤ん坊を放り投げる姿はギャグにしかみえない。

・・・というツッコミはおいといて。
全部見終わったあと、この物語は「血が繋がっていなくても家族になれるんだよ」というお話だったのかなーと思いました。

一人だけ赤の他人だったアナベルが本当にヴィクトリアたちに愛情を抱いたように、アナベルを「ママ」に選んだヴィクトリア。
同じようにリリーも、産みの母親やアナベルより自分を守ってくれていた「MAMA」を選び、MAMAもずっと探していた赤ん坊より、リリーたちを選んだ。

・・・その選択は、姉妹たちの永遠の別れとなってしまったけれど。

リリーについて考察

ラストの選択は、幼かったゆえに家族と過ごした時間が少なく、自分の本当のお母さんの記憶がすぐに薄れてしまったリリーとヴィクトリアの違いではあるが、さらにちょこっと考察のようなものを付け加えると・・・

ヴィクトリアがMAMAの姿を認識していなかったことに対し、リリーは始めから人外の存在として受け入れていたこと。(恐らくヴィクトリアは保護され眼鏡を受け取ったあと、MAMAの姿を認識。理性を取り戻したあと、「MAMA」が異形の存在であることを改めて理解した。しかし最後の言葉はウソではなく、幽霊であっても彼女への愛情は確かにあったのだと思う)

あと山小屋で暮らしていた時、リリーが狼に襲われていたところをMAMAが皆殺しにして助けてくれたことが大きかったのではないかと思う。

しかし最も大きな要因は
山小屋生活でヴィクトリアは獣を食べているのに対しリリーはMAMAの一部である蛾を食べていたこと。

この世のものではない力の一部を食べてしまったことで、リリーも生きたまま死者の世界の住人の様な存在になってしまったのかもしれない。

元は短編作品!

※序盤の50秒ほどはインタビュー。
※吹き替えはなく、英語字幕。

元は3分もないショートフィルム。
姉妹の名前がヴィクトリアとリリーなのは同様ですが、短編ではメガネっ子なのはリリーの方。映画内でMAMAに姉妹が追いかけられる場面の階段の広間や構図、カメラワークは、短編と一緒。こちらのmamaも十分怖い。

最後に!

家族は血の結びつきではなく、愛情によってなるものだという家族愛がテーマなだけにホラー要素は薄く、リリーが死んでしまうラストに賛否両論だと思いますが、最後にようやくMAMAもあるべきところへ逝き、永い惨劇が終わりを告げたのだと思います。

あまり怖くはありませんが、個人的にはMAMAを直接映さずに存在だけを暗示させる演出は好き。(姉妹が「誰か」とタオルケットで遊んでいる様子をカメラワークでみせる演出は古典的ですが、舞台をみているような面白さがあります)

ほかにもアナベルが徐々に愛情を抱いていく過程だとか、子役の演技の素晴らしさとか、MAMAの怖さとか、見所はたくさんある映画。ちょっと知名度は低いかもですが、見終わったあと切なさが残る寓話のように美しいホラー。たまにはこんな作品もいいものです。

↓切な系ホラー、お好きですか?

↓同じく短編動画が元!