ストーリー ?????
グロ度 ★★★★
美術 湯浅ワールド全開
結論:世界一ブタに容赦が無いアニメ。
ねこぢる草(そう)
2001年 日本
原作:ねこぢる
監督:佐藤竜雄
作画監督:湯浅政明
※最後のオチ含めたネタバレあり。
※原作「ねこぢるうどん」は未読の状態での視聴です。
/主要猫たち/
■にゃっ太
猫の男の子。3歳。
ブタの扱いがヒドい。
■にゃーこ
にゃっ太のお姉ちゃん。5歳。
病気で寝込んでいたが・・・。
ストーリー
にゃっ太とにゃーこ。
二人はとあるサーカスを見にいき、そこから不可思議な世界に迷い込んでしまう・・・一応はそんな感じのストーリーだが、彼らが旅する世界は不思議の国のアリスのように支離滅裂で、それ以上にグロテスクで奇怪な世界である。
二人のセリフは一切ない。(にゃっ太や一部のキャラはマンガのような吹き出しでセリフが出る)
かろうじてサーカスの団員が「そーれ」!というシーンがあるが、あとは喋っていても早回しのような音声となっていおり、最低限のBGMと効果音、あとはひたすらに映像を追う作品となっている。
ネタバレしかないあらすじ
プロローグ~サーカスへ
どっかのランプの精みたいな死神が、にゃーこを連れていく姿を目撃したにゃっ太。なんとか引き止めようとおねいちゃんの腕を引っ張るも、おねいちゃんの魂は分裂。半分を死神にとられてしまう。
廃人のようになってしまったにゃーこ。
おつかいの帰り道、にゃっ太はにゃーこをつれサーカスを見にいく。そこでは本当に人体を切断するショー、客が望むものを何でも出す不思議な男、口から光る星を出す巨大な鳥など、奇想天外なショーが繰り広げられていた。しかしショーの途中で鳥の体が破裂!中に詰まった雷雲と水が町に溢れ出してしまう。
大洪水と砂漠の世界
大洪水に飲まれてしまった町を、一匹のブタと共に船で漂流する二人。渇きを雨水で凌ぎながら過ごしていたが、ついに一緒にいたブタを解体、ロースとんかつにしてしまう。
そしてここから、にゃっ太の視点とは別に「神様」の視点が描かれる。(物語上で明確な表記は無いが、このブログ内では便宜上「神様」と表記する)
神様は洪水の中から地球を取り上げると、にゃっ太たちの世界もみるみる干上がり、砂漠の世界と化してしまった。
乾いた大地をブタに乗って進むにゃっ太たち。さらにブタを棒で殴ってタンコブを作り、それを食べて飢えをしのごうとしたが、味は・・・。あまりの不味さに腹を立てたにゃっ太は、にゃーこと二人でブタをボコボコにする。しかし。
「おねいちゃん とれた手が」
ブタに逆襲され噛まれたにゃっ太は、手がとれてしまった!
どこかおかしな人々
道中で尋ねた屋敷で、とある女性に手を縫い付けてもらえたにゃっ太。
だがその家には、バラバラの体のパーツがつまったゴミ袋と、継ぎ接ぎだらけのぬいぐるみが大量にベッドに横たわっていた・・・。
次に尋ねた豪華な屋敷では、親切そうな男性が二人を出迎えてくれる。ハイヒールを履いた鳥の丸焼きやお菓子の家など、ご馳走をたんまりと振舞ってくれる男性。最後には二人を野菜と一緒に熱々のお風呂に入れてくれる。お湯加減ならぬ味加減まで見てくれる親切な男性だが・・・。
目的は当然、二人を食べること。
ヘンタイコスチュームに身を包み、巨大なハサミを持って襲い掛かってきた男を華麗にかわしたにゃっ太は、逆に男の腕を切り取ってお鍋に沈め、逃げ出した。
再び砂漠をさすらうにゃっ太。
喉の渇きが限界だった二人だが、砂の中から水のゾウが現れピンチを脱する。しかし、水のゾウは歩いているうちにどんどん蒸発してしまう。砂を掘って水を見つけたにゃっ太だが、時既に遅く、ゾウは完全に消えてしまった・・・。
時間の歯車
砂漠と化した星を真っ二つにする神様。が、転がり落ちた半分が歯車に挟まり、歯車はそのまま動かなくなってしまう。すると同じように、にゃっ太たちの大地も二つに裂け、時間も止まってしまった。
落とした星を取ろうと、時間を進めたり戻したりする神様。あらゆる人の死の直前や、戦争といった悲劇が巻き戻っていく。ようやく半分の星を取り戻した神様は、血の様に赤いその中身を、スプーンにすくって食べ始めた・・・。
気がつくと、にゃっ太たちはまた船の上にいた。船はそのまま、機械仕掛けで動く者たちが住んでいる機械の森へ。そこでにゃっ太は、一つだけ色鮮やかに咲いている花を見つけ、にゃーこに嗅がせる。実はその花はにゃーこの魂が込められていた花だった。ようやく元に戻ったにゃーこは笑顔を見せ、にゃっ太の頭をなでる。
そして神様が食べていた星も、元の地球の姿に戻っていた。
結末
元通りになった世界でにゃーこと手を繋ぎながら、おつかいを済ませて帰ってきたにゃっ太。家族でご飯を食べ、団欒の時間を過ごす。
しかしにゃっ太がトイレに行っている間に、まるでテレビを消すように一人ずつ姿を消していく家族。
そして世界の電源も切られ、あとには砂嵐が広がった・・・。
考察
このアニメで考察の意味なんて殆ど無いかもしれないが、原作未読の視点で思ったことなどをとりあえず述べていく。
冒頭のお風呂場のシーンについて
にゃーこの魂を半分とられてしまうまでが描かれた導入パートでは、冒頭にゃっ太がお風呂場で遊んでいて溺れるシーンが入る。そしてフロ場から出たあとは、両親や町の人に話しかけてもなぜか反応がない。唯一反応するのは、死神とにゃーこだけである。
そして死神からにゃーこの魂を半分取り返したシーンのすぐ、お風呂場で溺れたままになっているにゃっ太を父親が発見。介抱されながら目覚めたにゃっ太はにゃーこの魂を抱きしめている。
このことから、最初に風呂場からでた後~父親に助けられ目覚めるまでに起きた出来事は現実ではなく、「お風呂場で死にかけていたにゃっ太の臨死体験」なんだと思われる。
サーカスの人体切断ショー
みんなのトラウマその1。
廃人のようになってしまったにゃーこを連れて「くじら大サーカス」を見にいくにゃっ太たちが見た奇怪なショー。輪切りにされてしまったバニーガールに向かって怪しげな呪文を唱えると、バラバラになった手足や胴体が血飛沫を撒き散らしながらぐるぐると回り始める(この時の血飛沫がにゃっ太たちにもつく)。すると、バニーガールは元通り!になるというシーン。
ここでは、
にゃっ太たちに飛び散ったはずの血が、復活した後には消えていた。なので神様はバニーガールを生き返らせたのではなく、「時間を巻き戻して復活させた」に近いのではないだろうか。
※ここで人体切断ショーをしている男は、合間合間に登場する時間を進めたり巻き戻している存在(神様)と同じだと思われる。
ブタの扱いがヒドい漂流シーン
ここで面白いのは、飢えているというのに自分のフンを食べた魚は食べず、一緒にいたブタを食べてしまうシーンである。ひん向かれてスーパーでよくみる肉の部位の図をかきこまれ、ロースの部分を切り取られてしまうブタだが、その後自分の肉で作ったトンカツを食べさせてもらうという・・・よくよく考えればエグいシーンである。
原作者のねこぢるさんは魚や肉は一切食べなかったそうだが、ブタの扱いの酷さは食への嫌悪感からきているのかもしれない。
機械の男
みんなのトラウマその2。
コイツの腕をチョキチョキするシーンは結構グロい。
にゃっ太たちが砂漠で出会ったアブない男。しかし彼の頭は機械になっており、正体はサイボーグ(ロボット?)となっている。サイボーグなのに彼がなぜにゃっ太たちを食べようとするのか、殺そうとするのかは謎なままだ。
「生き物の中で、食べること以外で命を奪う行為は人間しかやらない」というよく聞く考えへの、皮肉なんだろうか。
ラストについて
一人ずつ姿を消していったにゃっ太の家族。これが意味するシーンはなんだったのか。
・「物語としての役目を終え、視聴者にテレビを消される」ことを暗示?
・実は最初のシーンのお風呂場でにゃっ太は死んでおり、神様が正しい世界に戻した為に、にゃっ太の理想の世界も終わりを告げた、という暗示?
メタ視点(神様)やエンディングの、壊れたオルゴールのみたいなBGMと共に思い出が何度も巻き戻ったりするシーンは、何かループめいたものも想起させるが・・・意味があるのかないのか、結局は個々に想像するしかないのだろう。
最後に
「あのヘンダーランドの湯浅さんが作画を担当されている」ということで観たアニメなので先入観があるのかもしれませんが、2頭身のキャラの動き方がどことなくしんちゃんを連想させます。不気味なカメラワークやアングル、リアルな絵柄ではないのに、残酷さだけは伝わる戦争のシーン(特に、人がバラバラと落ちていく場面)など、湯浅さんによって描かれた世界観は、やはりどこかホラーめいてますね。
カオス、不条理、シュール・・・でも、もっと恐ろしいものが根底にあるような気がする物語。子供のように無邪気で、それでいて狂気めいた何かを感じざるを得ない作品でした。
30分という短いアニメーションですが、不気味なものに耐性があれば、ぜひ一度見ていただきたいアニメです。
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