ラーメンズ第5回公演
『home』
※DVD版の視聴です。
※各ストーリーのネタバレあり。ご注意ください。
目次
無用途人間
「誰か私たちに、しなきゃいけないことをください!」
伝達用人間の鈴木(小林)が、無用途人間:佐藤(片桐)に自分の役目を渡す。役目を受け取った人間は伝達人間となり、「しなきゃいけないことがある!」と喜ぶが、役目を果たした人間は無用途人間となり、「あー、しなきゃいけないことがなくなってしまった」と落ち込む。
こうしてずっと、互いに役目を渡し続けていく・・・という短いコント。
"しなきゃいけないこと"を他人に指示されなければ何もできない人間をテーマにしている。わりとブラックな気がするのは自分だけだろうか。
実は伝達用人間の鈴木は、佐藤から「しなきゃいけないことがある」という生きる希望を奪わない為にあえて「嘘」をついているのだが、この嘘が本当は誰の為についた嘘なのか・・・そんなことをぐるぐる考えてしまう作品でもある。
ちなみに、このコントがきっかけとなって生まれたというKICK THE CAN CREWの「ナニカ」という曲に、「無用途人間」の音源が使用されている。(アルバム「magic number」に収録)
読書対決
「ジャンバルジャン、頑張るじゃん!」
本の内容を競い合っている内に、話がどんどんおかしな方向へ行ってしまう二人の話。
合間合間に入る小競り合いが面白い。
互いの話が噛みあっていないようで徐々にリンクしていくというコントは、この後も度々登場する。
自分は芥川龍之介の「鼻」の存在をこの作品で知ったのだが・・・この話とロミジュリで対決するという発想が凄い。
映画好きのふたり
「1ドルコインには・・・防弾チョッキの役割もあるんだぜ!」
「ばっきゃろー!!」
1本の耳かきを巡り、なぜか壮大なハリウッド映画ごっこがはじまる!
明らかに賢太郎さんが撃っているのはロケットランチャーなので1ドルコインでは防げないだろ!とかそんなことは気にしてはいけない。なぜならこれは映画の"あるある展開"と洋画の吹き替えのセリフ回しを再現したコントだからだ。(因みにお話の中に登場する映画の作品名や俳優名は架空のもの)
片桐さんのベタな悪役っぷりと、賢太郎さんの吹き替えボイスが好きすぎる。
※作品のタイトルは戯曲集のものを記載したが、DVD版のタイトルは「映画マニアの部屋」となっている。
縄跳び部
「ネクタイ締めてヒゲ剃って♪」
「空手チョップをおやりなさい♪」
縄飛び部という謎競技のお話。
「お嬢さん、お入んなさい♪」という縄跳びのわらべ唄のリズミカルさと、合間合間に入る女子マネージャーを気にする小芝居とのテンポが心地よい。が、マチ子ちゃん(25歳OL)にお見合いを勧めるおばさんの「まだじゃないわよもうなのよ。25超えたら早いわよ♪」という歌詞が胸に突き刺さるコントでもある。
「プーチンマーチン」や「日本語学校アメリカン」など、ラーメンズのリズム感が好きな人間にはたまらない作品。
ファン
「おめぇ何言ってんの?
何で高速道路透きとおってんだよ!」
とあるバントのファンの二人が、もう一人のファン友達を待っている間、仲間割れを起こしてしまうという話。
違うバンドを好きな友達を受け入れられない、アンチになりがちな信者めいた人間が登場するコントだが、冒頭の会話は「同じ趣味を持っていて、友達だと思っている間柄でも、実は噛み合っていない」ことへの伏線だったのだろうか。
この話に登場する3人目の「バカ柳」はこの後も色々なコントに名前だけ登場。白い粉を持ってたりバッファローの剥製と戦ったり、色々と危険な香りがする人物である。
百万円
「お腹がすいているでしょう。
この百万円をお食べ」
100万円を手に入れた悪人と善人の話。
悪人ぶっているがやっていることはいい人な二人組と、善人ぶっているがやっていることは悪質な二人組をそれぞれ演じ分けている。
この話では悪人たちは途中で「オレたちっていい人なんじゃないか?」と気がついてのちに善行を重ねるが、偽善者の二人組は悪いことを自覚しながらも反省はしない(そしてバチが当たる、ということもない)。この違いを色々と考えさせられる話でもある。
(偽善者組がおなかが空いている子犬に「さぁ。これでハンバーグでも買いなさい」というセリフがあるが、ハンバーグには玉ねぎが入っているため犬には猛毒であることを考えると・・・)
漫画家と担当
「十六茶を読むな!!」
とある漫画家と担当。
二人は学生時代からの友人同士であり、担当は原稿ができるまで暇を持て余していた。
が。実は漫画家は担当には内緒で、別の出版社との契約を裏で進めており・・・。
この「一方が一方を騙しながら話が進む」という展開や、実はちょっといい話?と思わせて最後までシリアスじゃないというオチは後の作品にも多く登場する。
寝転がるシーンで思った以上に勢いよく床に頭をぶつけている仁さんがとても可愛い。
無類人間
「チチで育ったオスのたぐい!」
『無類』のナニかに、人類が『類』を与えていく話。
一番最初の「無用途人間」と対になる作品で、「哺乳類」や「オス類」「優しいヒト類」などを様々な類をあげていったり、交換したりする話。類(るい)を"たぐい"と読むだけでなぜこんなにも面白いのか。
最後、猫類になった仁さんが魚類になった小林さんを襲おうとするも、なぜか逆に、魚類になった小林さんが仁さんを襲うというラストは、戯曲集を読んでいないとちょっと解りづらいかもしれない。
追記
こちらの小林賢太郎さんの記事にて、2017年の1月1日から、ラーメンズ公式チャンネルより、映像ソフト化されているコント100本がyoutubeにアップされているとのご報告がありました。広告収入は日本赤十字社に寄付され、復興支援に使われるとのこと。今回ご紹介した『home』のコントも公式の動画で見られますので、是非に!!
最後に
NHKBSで6月26日に放送される「小林賢太郎テレビ8」のキャスト欄に、
「片桐仁 小林賢太郎」
(ラーメンズ)
という文字を発見した時の感動たるや・・・!!しかも久ヶ沢徹さんにオレンヂさん(現:辻本 耕志さん)に大泉洋さんまで!?なんという豪華キャスト・・・!ああ、生きてて良かったぁ・・・!!
感動のあまり思わず昨日は一人ラーメンズ祭りを開催してしまいました(ぼっちとかいうな)。
この『home』はDVD化は2009年ですが、公演自体は2000年と本当に初期のもの。白い服に白い舞台、単純で最低限の小道具と役者の演技力のみで構築していくスタイルは初期から変わらず。数年ぶりに観ても色褪せない面白さでした!
これを機に6月まで、ちょこちょことDVDをご紹介できたらいいなぁと思っております。ますますジャンルが雑多なブログとなっていきますが、どうかご容赦頂ければ幸いです。
↓仁さんと大泉さん、夢の競演!(一瞬だけどね!)