※アニメ第十二話のネタバレあり!
※原作はほぼ未読の状態で視聴しています。
結論:わかっちゃいたけど、つらすぎるわ・・・。
菊を誘ってくださった亀屋旅館の方の計らいで、助六と菊比古にとって、念願だった『二人会』を開催する事ができました。
直前まで「所詮温泉に入りにきた客に落語なんかわかるわけない」と渋っていた助六ですが、落語好きのご主人が、わざわざどういう趣旨の会なのか方々に声をかけてくださったおかげで、家内を亡くした松田さんをはじめ、旅館には懐かしい顔が集まります。そのお客さんの雰囲気は、かつての寄席と遜色ないものでした。
「落語は人が語らすもの」・・・人のありがたみを改めて感じながら、数年ぶりとなる助六の落語がはじまります。
助六の"汗"
今回助六がやっていた「一番太鼓」というのは、開場と共に本来なら前座が鳴らすもの。助六にとっては凄く久しぶりのバチの感覚でしょうね。そして彼の頬には汗が・・・。
他人には見せていませんでしたが、落語中の首筋の汗の量が、彼の緊張を如実に物語っています。
今週の落語:芝浜
酒好きの熊という男が、仕事へでかけた際、海に沈んでいるお財布を拾う。中には大金が入っており、大喜びした男は仕事もほっぽりだして家に帰り、得意気に女房に財布を見せびらかし、「これでもう仕事なんざしなくてもいい」と大喜び。家に仲間を招き、さんざん飲み食いして騒ぎたおす。
次の日。
二日酔いの頭で目を醒ますと、「はやく仕事へいってくれ」「こんなに呑んでお金はどうする気だ」とおかんむりの女房の姿が。昨日の財布があるから大丈夫、といっても、女房はそんなものは見ていない、夢でも見ていたんじゃないかと告げる。
財布を拾ったのは夢だったのか!と焦った男は、借金に途方に暮れて泣いている女房を見て、今までの自分を反省する。
「やっと目が醒めたよ」
「おめぇを泣かせたくないもんな」・・・呑み食いした分の借金を返すため、心を入れ替えて働き出す男。そのかいあってか3年後には、借金を返済、家計も持ち直し、男は立派な仕事人となっていた。
だがある日、女房からあの拾ったお財布を見せられる。実は夢というのは、稼いだ金を全て酒につかってしまう男をなんとかしたくて、女房が咄嗟についた嘘だった。女房が泣きながら謝罪するも、男はその嘘のおかげで自分の身の振り方を考えることができた、という。
「感謝してるよ。ありがとう」
そんな男に、今日は特別とお酒を勧める女房。
男は注がれた酒をみて感激するも、口をつけることはしなかった。
「また、夢になるといけねぇ」
助六があまりやらないという人情噺。
誰に向けた噺だったのかは明らかです。
ですが、こっそりと見に来ていたみよ吉は、最初の菊の落語だけを聞いて出て行ってしまいました。
もし彼女がこの落語を聞いていたら、後の悲劇は防げたのでしょうか。
菊の夢
二人会が盛況のうちに終わり、今日一日が夢のようだったという助六。そんな助六に、師匠の家で、またみんなで暮らそうと誘う菊。みよ吉も探して、3人で家に住めばいいと。
以前は「一人になりたい」といっていた菊は、ここにきて了見が変わったといいます。
「人というのは、取るに足らない詮ないことを、ただわけあうことが好きなんだ」と。
みよ吉と、小夏と、そしてもう一度助六と。
みんなでずっと一緒に暮らす。
それが菊の最終目標だったようです。
でもそれ修羅場の予感しかしない。
みよ吉との邂逅
菊だけを呼びだしたみよ吉は、
もう助六も、小夏もいらない、菊さんさえいればいいと言う。
その言葉を聞き、こんなことになったのは全部自分のせいだ、悪かった・・・とあやまる菊に、満足そうに「そうよ、あの人と私は似てるの。あなたのせいで人生が狂った者同士」と嗤うみよ吉。
そんな彼女の涙を拭う菊。
舌でとかエロすぎる・・・。
唇が離れたとたん、みよ吉は菊に心中を迫ります。どうあがいても菊が自分の元へ戻ることはないと、絶望してしまったのでしょうか?
寸でのところで助六が登場。
助六はさきほどの「芝浜」の男と同様、泣きながら「もう落語はやめて働く」と告げます。みよ吉と小夏が一番自分にとって大事なんだ、と・・・。
その言葉に涙するみよ吉。
それとは対照的な菊の表情。
この言葉だけは、絶対に助六の口から言わせたくはなかったのでしょう。
菊は、
助六に落語を捨てないで欲しかった。
みよ吉は、落語を捨てて欲しかった。
菊の夢は、みよ吉の幸せではなかった──
ですが彼女の夢が叶った瞬間、無情にも柵は壊れてしまいます。
「ゆりえ!」
それがみよ吉の本名。
落下した時、みよ吉を放せば助六は助かったはずです。でも「こいつ一人を地獄へは墜とせねぇ」と、共に落ちていった助六。最後の瞬間に、「頼んだよ」という一言だけを残して──
それはまごうことなく、「心中」でした。
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気合が違った構成
今回のオープニングもエンディングも削ったこの構成は、助六の人生最期の落語となった「芝浜」を可能な限り語らせるため。主人公の男と自身を重ね、みよ吉と小夏への思いが込められた語り部分に入る合間合間の表情のカット・・・落語家・助六としての彼と、一人の男としての彼の本音が交差する、素晴らしい落語シーンでした。
最後に
泣きすぎて目が痛いです・・・。
切ない。菊の「また捨てられた」という一言も、叶わなかった夢も・・・しかし本編の切なさなんぞどこへやら、馬鹿みたいに明るい与太郎の次回予告がちょっとニクい!いよいよ来週が最終回、時間軸が再び現代に戻ります。両親の死の真相を知った小夏、そして与太郎・・・これから二人は、この物語をどういうオチに持っていくのでしょうか?
↓次回の感想はこちら!
↓衝撃の事実・・・!!