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迷家 ツミトバツ ネタバレ感想(全3巻)~アニメ版との違いについて。ナナキの設定やこはるんの動機の改変は良かった!

迷家~ツミトバツ~ 3 (裏少年サンデーコミックス)

人間のトラウマが具現化する謎の村、「納鳴村」での人間模様を描いた「迷家」。本日そのコミカライズ~ツミトバツ~」の最終巻が発売されました!アニメよりもお色毛度が格段にアップしましたが、その分グロ描写も容赦無くなった漫画版・・・しかしアニメ版では納得いかなかったナナキや村の設定も追加されました。今回は主に、追加されたアニメとの相違部分について述べていきたいと思います!

※アニメ版、及び漫画版ラストのネタバレあり。

アニメ版との違い

納鳴村の神様の存在

漫画版では、納鳴村に住む『神様』の存在が明らかとなった。

この神様は人間の過去の苦痛(トラウマ)が好物で、納鳴村はその神様の庭である。神様は人間のトラウマを供物にナナキを生み出す力を持っているが、最終的には宿主を取り込んだナナキは神様に還元されてしまうため、一種のソウルイーターのような存在となっている。村の地下は神の御座と呼ばれる霊界のような場所と繋がっており、そこに神様のご神体(鏡)がある。

ナナキの設定

アニメではトラウマ(ナナキ)が幻となって見えており、各自見えている姿が違った。最終的にはこはるんによって颯人のトラウマが膨れ上がり、巨大なナナキとなって誰の目にも見えるようになったが、漫画版ではナナキが幻から具現化する条件など様々な設定が追加された。

漫画版では、ご神体の鏡から湧き出た黒い霧がナナキの原因となっており、これが集まると人間のトラウマが幻となって見えるようになる。神の御座に至る道では影響が強くなり、トラウマだけではなく本人が持つ不安が幻となり襲い掛かってくる(幻に刺されると痛みはあるが、実際にケガはしていない)。

具現化には条件があり、それが「ナナキの目を見て名前を呼ぶこと」。一度具現化すると他者にも見えるようになり、周囲や宿主に物理的な影響を及ぼすようになる。また具現化したナナキに攻撃すると、その痛みは宿主が受ける。だが宿主が意識を失うと一時的に姿も消える。

村の設定

川を下ると現実世界と繋がっており、神山教授がいる小屋がある。漫画版では村から逃げ出すこと自体は容易に出来るものの、「納鳴村から逃げ出した者には恐ろしい罰がくだる」=ナナキが神様に取りこまれてしまうと無気力状態が続き、やがて廃人状態となって餓死してしまうことが明らかとなった。

また、光宗たちより前に村にいた人間はみんなナナキに取りこまれ神様へと還元されてしまい、存在が消失している。そのため、アニメ版のように「村に残る」という選択は出来なくなっている。

漫画版のストーリーについて

魔女裁判が行われるまではほぼ一緒だが、魔女裁判後、颯人に襲われ光宗と真咲が川に落とされ現実世界に帰還。神山教授から神の御座の情報を聞き、他のメンバーを助ける為に村へ戻るという展開になっている。

後半からはこはるんの本性が明らかになり、真咲を人質にとり、神の御座の場所を知るレイジとの交渉の材料にするなど冷酷な面が描かれ、ラスボスも彼女のナナキへと変更された。最後は光宗がご神体を破壊し納鳴村が崩壊。残留組と別れることもなく、全員が現実へと帰還するラストとなっている。

キャラクターの設定や性格について

コミカライズするにあたり、出番が大幅に削られ役回りが同一となったキャラもいるが、アニメ版では描かれなかった設定や登場しなかったナナキが初めて描かれたキャラも。また、アニメ版では矛盾が多かった真咲の行動や設定は大幅に改変されている。

颯人

アニメ版と基本は変わらない。
漫画版では真咲への魔女裁判後、彼女への嫉妬から、真咲をナイフで傷つけたフリをして「ケガをしない真咲は悪霊である」と周囲を煽り、真咲を殺させようとした。しかしそれでも真咲を助ける光宗に逆上し、光宗をナイフで切りつけ2人をガケから落としてしまう。その後は具現化したトラウマを研究材料にしようとするこはるんに利用され、真咲が悪霊ではないことに気付いたメンバーから黒幕だと疑いをかけられるも、光宗によって救われる。

真咲

アニメでは1年前に行方不明になっているという設定があったが、その間何をしていたのか?など行動に矛盾も多く、漫画版では3ヶ月前にレイジを具現化するために村へ行ったという設定に変更。

先にいた村人たちにレイジを捕らえられ、逃げる途中で川に落ち神山教授に拾われた。その後は村の地図をSSDのサイトへ送り、レイジを探すため村へ戻ってきた。

アニメ版とは違い、悪霊だと疑われたあとは水責めや塩を延々と食わされるといったエグい拷問を受けたり、こはるんに殺されそうになったりと酷い目に遭う。

レイジ

真咲のナナキで、3巻から登場。
こはるんの手先となったジャックに捕らえられていたが、光宗たちを神の御座へと案内するなど協力してくれる。漫画版では真咲を救う為なら手段を選ばない冷酷な性格となっているが、これは3ヶ月前に捕らえられた際、バケモノと罵られた拷問を受けたことで人間に絶望し、アニメ同様の優しい性格から変貌していったため。

こはるん

最も設定が改変された人物。
漫画版では幼少の頃から「人を傷つけることがよくない」という考えが理解できず、他者の痛みに共感することができないサイコパスじみた性格となり、そんな自分のことを父親が「怪物」と呼んだことがトラウマとなっていた。そのため彼女のナナキは自身の姿となっている。

ナナキを失い、他者に無関心となり研究に没頭していた父親に冷遇されたことから、父の関心を惹くため、「父の研究を完成させればきっと愛してくれる」という妄執にとりつかれてツアーを企画。アニメ版とは違い颯人にも容赦なく暴力をふるい、拉致した氷結も神の御座にいく捨て駒にしようとしていた。

終盤はご神体を盗み、ナナキと一体化。
研究の為とツアーメンバーのナナキを全て取り込み巨大化するが、逆に颯人に弱点をつかれ、レイジと光宗の活躍によってご神体を破壊され、生還する。

アニメ版より狂人じみた描写が多いが、自身が目的のためなら他者を傷つけることを厭わない性格であることは自覚しており、それゆえに父から愛されないことを悩んでいた。この「親から愛されない」という悩みが光宗の共感を生むことになる。

その他のキャラ

■よっつん
アニメでは未遂で済んでいたが、漫画版では実際に真咲を襲った鬼畜野郎になっちゃったYO!抵抗した真咲に石で殴られ逆上したところを、真咲を助けようとしたレイジに川に落とされ、アニメ版同様神山教授に救われる。

■マイマイ
アニメ版では「でっかい光宗」の姿をしていたと言葉で説明されるのみだったナナキが登場。漫画版では香川くんの姿をしているらしいが、光宗とは全く似ておらず、頭がぱっくりと割れたグロい姿をしていた。

■らぶぽん
狂人度がカンストした処刑大好き中学生。
アニメでは養父の坊主の象徴として般若の姿となっていたトラウマだが、漫画版では坊主にらぶぽん自身も性的な嫌がらせをされており、それを母親に訴えると今度は母親から虐待を受けるようになった描写があるため、『般若』は母親の姿をしている。

村から脱出した後は児童相談所が介入し、虐待はとりあえず止んだようだ。その後はソイラテの家に泊めさせてもうらなど、彼女が保護者のような役割を担っている。

■ダーハラ
アニメでは描写されなかったナナキが登場。人間の口から人間の顔が連なっている不気味な姿をしていたことから、恐らく人間関係によるトラウマかと思われる。

■美影
アニメ版同様自身のトラウマと遭遇するが、その後発狂。終盤まで牢につながれ出番はないが、ラストでは正気を取り戻している。

■トシボーイ
アニメ同様腰巾着キャラ。
巨大なクモの姿をしたナナキが登場した。

■ジャック
下半身がクモのようになっているナナキが登場。足がコンパスになっていたり定規らしきものがあったり、ジャックの先生の姿が元となっている。

■氷結くん
失踪後はジャックとこはるんに拉致られ、牢屋に繋がれていた。こはるんにも「役立たず」と言われるなど扱いが酷い。

■美里
バス運転手のナナキ。
アニメ版では天使だが、漫画版では物体Xよろしくグロい姿に豹変。「許さない」といって運転手に襲い掛かる。

全体的に良改変だった漫画版

アニメ版では「トラウマが見えることで自分の過去の傷と向き合い、それぞれが前に進めるようになった」という展開で、ナナキの存在や納鳴村は比較的に肯定されて描かれていたが、漫画版では納鳴村は人の苦痛を供物とする神様が支配する村となり、ナナキも宿主を取り込み、神の元へと還元する恐怖の存在となっている。(この設定ならば、アニメでは謎だった納鳴村の名前の由来が「神様に悲鳴(苦痛)を納める村」という意味であったと推測できる)

「トラウマが具現化する」という事象が神様が原因であると明確に描写され、真咲の行動やこはるんの動機もはっきりとしたことで、アニメ版では理解しがたい部分がしっかりと補完されている。また、らぶぽんのナナキが般若の姿をしている理由など、アニメでは大人の事情で描けなかった設定も補完され、相変わらず出番がないキャラも多いものの、全体的には良改変な漫画版だった。

現在アマゾンで1巻のkindle版が無料で読める。
まだ1巻はマイマイの透けブラなどエロ要素でストーリーがあまり進まないが、2巻以降のストーリー展開や、ナナキのグロテスクな描写は見ごたえがあるので、アニメで満足できなかった人はぜひ2巻以降も読んで欲しい。

最後に!

ついにコミック版も完結した「迷家」!
個人的には漫画版のように、アニメ版もグロくてホラーな方向に持っていっても良かったと思います。こはるんのキャラ付けはこっちの方がわりと好きかも。

ナナキの設定や村の設定が追加されたことで謎が解明された部分も多く良改変でしたが、3冊に納める為に3巻の終盤の展開が走り勝ちだったこと、リオンなど小説で補完されたキャラはともかくなぁなやソイラテなど、アニメでもマンガでも深く触れられないキャラが残ってしまったことは若干残念でした。キャラ多すぎなんで仕方ないんですけどね・・・。

拷問描写がえげつないですが、らぷぽんやこはるんの狂人っぷりや何気にエロい真咲など見所も多い漫画なので、アニメが不完全燃焼だった人にはおすすめのコミカライズでした!

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