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結物語 ネタバレ感想~23歳になった阿良々木が主人公!大人になった歴代ヒロインたちも登場するぞ!

結物語 (講談社BOX)
「いや。百%趣味だ」

結物語《ムスビモノガタリ》
講談社
作者:西尾維新
結論:出会ったばかりのヒロインが脱ぐのは伝統です。

※あらすじ・ネタバレあり。未読の方は非推奨。

目次

主役は警察官となった阿良々木暦!

大学を卒業し警察官となった暦が4ヶ月の研修期間中、臥煙の手回しにより直江津町に発足した、怪異を専門に扱う部署・・・直江津署風説課に配属されたところから物語はスタート!風説とは都市伝説や街談巷説・・・つまり「うわさ話」のような類のこと。《暦物語》で蒐集していたような怪談めいた噂話を、仕事として調査するのが主なエピソードとなる。

本編で暦は国家総合職試験をクリアし、大卒で入庁・・・つまりキャリアとなり、正しくは阿良々木警部補となっている。嫌味なエリートというイメージがあるためか、周囲からの扱いには苦労している様子。

《結物語》には風説課で働く女性たちが新たに登場するが、彼女たちはみな暦と同じくその身に怪異を宿すヒロインであり、暦は彼女たちと、噂(風説)が怪異譚となるまえに取り締まり、町の平和を守るのが役目となる。

また5年ぶりに地元に帰ってきた暦が、大人になった神原駿河、火燐、老倉育、羽川翼・・・それぞれのヒロインたちと再会する、というのも見所の一つとなっている。

ぜんかマーメイド

新ヒロイン:周防全歌(すおう ぜんか)

風説課ではじめて暦が組んだ女性。
階級は巡査で、26歳。
自称半漁人だが、不死の人魚である。

10年前は将来有望の水泳選手だったが、信号無視した小学生を避けたトラックに轢かれ重傷を負い、不老不死である『人魚の肉』を食べ一命をとりとめる。が、代わりに水に濡れると体が魚になるという体質になってしまい、夢を諦めた過去を持つ。

人魚と言えば聞こえはいいが、実際は手を洗おうとしただけで手がヒレに変わるなど雨の日には外を出歩けないレベルで苦労しており、水の量や質や温度でどんな魚になるかが決まる。深海魚などに変化する場合もあるらしい。変化後の姿は人魚姫のような人間タイプではなく、完全に魚人となる。

ちなみに彼女の全身が「人魚の肉」であるため、怪異にとっては非常に美味らしい。

あらすじ

直江津高校前の川で、最近になって立て続けに子供が5人溺れるという水難事件が発生。1人は意識不明の重体となっている。しかしこの意識不明の少年を除き、3人が「見えない手」に引きずりこまれたと証言した・・・という怪異事件を、周防と共に調査するというストーリー。

暦が川で泳ぐも異変は見つからず、忍の協力を得て「この事件が怪異絡みであり、解決しなければこれからも続く」とヒントをもらう。その後、周防が人魚の肉をエサに自ら川で泳ぐと、怪異と遭遇。その正体は、最初に溺れ意識不明となった少年の魂。溺れたまま川と同化してしまった少年は、助けを求めるあまり人を溺れさせてしまっていた。

ほぼ自分を放置していた両親の影響で大人を信用していなかったため、暦やその他の大人には反応しなかった。(周防に反応したのは、暦が駿河と会っている間に彼女が見舞いにきていたから)。

怪異の力で川に潜ることができなかったが、「どんな人間でも溺れさせる」という周防の「人魚の歌」の力を借り、暦が助けを求める少年の手をつかんだことで無事解決となった。

ヒロインのその後~火燐と駿河

■火燐
両親が中央に引き抜かれ、月火が海外の大学に入学。阿良々木家で一人暮らしとなっている。
現在は暦と同じく直江津署に勤めており、生活安全課の巡査として格闘技の腕をふるう日々を過ごす。ムードメーカーとして同僚からの評判は上々。片付けは苦手だが、一人暮らしにより料理スキルは上がっており、研修中の暦の食事の面倒を見ている。ちなみに身長は伸び続け、今では180センチを超えているらしい。でも歯ブラシは用意してある。

■神原駿河
意識不明の少年の見舞いに行った病院で出会う。髪は腰まであるロングストレート。現在は自身の経験や蝋花との邂逅があってか、スポーツドクターを目指している。休日は仲間たちとバスケをやっているが、大学に入り自分の視野の狭さを思い知ったとのこと。(凄い人には出会ったが、戦場ヶ原より好きになった先輩はいなかったらしい)

また、今もなお「扇くん」と連絡をとりあっているというが・・・?

■臥煙さん
直接登場はしないが、回想で登場。「裏で活動していた専門家業を、公の組織に移行する」という考えのもと、あらかじめ怪異がらみの人間を組織に送り込み、彼らが一定の地位を得てから実行に移したらしい。今回登場する風説課の人間とも関わりがあるようだ。

■忍
5年たっても勿論容姿は変わらない吸血鬼。だが、以前は真冬でも薄着のワンピース姿で登場していたが俗世間の影響を受けてか、今作では季節ごと・・・というより暦の服装にあわせてコスチュームが変わる(暦が水着を着ている時は水着、寒い日はもこもこコートなど)。

以前、忍の力を使い過ぎて体が吸血鬼に近くなってしまったことを反省し、今は暦の仕事に関し「手伝いはするが過度に協力はしない」というスタンスをとっている。また、暦を使い走りのように扱う人間は快よく思っていないようだ。

のぞみゴーレム

新ヒロイン:兆間臨(きざしま のぞみ)

2話のヒロイン。
階級は警部で、29歳。ゴーレムである。

見た目は小柄で童顔な女性だが、小学生のころ病気で死亡している。しかし、彼女の祖父母が禁術に手を染め、魂を泥人形に封じ込めゴーレムとして蘇らせた。その後は年齢に合わせ外見にも手を加えていたが、中学生の時に祖父母が死去。それ以降、彼女の外観は変化していない。

泥に魂がいつまで付着できるかはわからないらしいが、原則的には不死身。痛覚もない。しかし土で出来ているという性質上、乾燥するとヒビ割れてしまう。そのためいつも水を持ち歩いている。

合法ロリともいえるが、精神はちゃんと年をとっているのでどちらかといえばロリBBA。口調がなんとなく真宵と似ている。

あらすじ

直江津高校の生徒たちが下校中、背中から制服だけを切られるという「通り魔事件」が発生。被害者たちは一様にいつ切られたのか心当たりがないという。暦は兆間と共に、かつての母校で聞き取り調査へと赴く。

いまだ直江津高校の「存在しない1年3組の教室」に居ついている忍野扇との問答により、登校中ではなく下校中に被害が集中していることに気付いた暦は、兆間と下校中の生徒たちを見張ることになる。

暦はカーブミラー越しに。そして兆間は水を被ることで自身の体を泥に変化させ、完全に土と同化し張り込むが、異常は起こらない。

だが扇がくれたヒントから、被害者たちは下校途中にある、向かい合わせに設置されたカーブミラーで自分の背中を見たことで被害に気付いたと推測。たまたま下校中に気付いたケースが多かっただけで、実際の犯行現場は学校内であること、本人に気付かれずに制服だけを切れたのは、体育の授業中を狙っての犯行であることを見抜いた。

ヒロインのその後~扇ちゃん&撫子

■忍野扇
直江津高校の七不思議を一人で担当。学校内の迷える人間をさらに迷わしているらしい。見た目に変化はないが、暦によれば内面は劇的に変化しており、「手に負えないぐらい終わっている」らしい。だが、今回の事件の被害を未遂で終わらせていたのは扇ではないかとも推測している。

■千石撫子
今作の時点で既に町を離れており、《撫物語》でも描かれていたように臥煙さんの手伝いをしながら、現在は「千石撫子(なでしこ)」という名前で漫画家としてデビュー。3作目が連載中。扇いわく「人気はあまりないようだが、可愛いのに闇があると一部でカルト的な人気がある」とのこと。

みとめウルフ

新ヒロイン:再埼みとめ

苗字の読みは「さいさき」。
階級は警部で、29歳。人狼の末裔である。

代々続く人狼の家系。他の2人とは違って生まれつきの怪異であり、さらに彼女は狼の力が強いのか、満月だけでなく丸っこい物体を見るだけで狼に変身が可能。逆にスーパームーンの下でも自制することができる。その他は身体能力がかなり高いものの、おおむね普通の人間と変わらない。

口調も荒めで大雑把な性格だが、与えられた任務は絶対に遂行するという信念を持ち、警察犬になりたいという望みから警察官を目指していたところ、メンタルの強さを臥煙に買われた。23歳のころには既に部隊を率いて災害救助や規模のデカイ犯罪捜査を行っていたらしい。

ツバサ・ハネカワ(羽川翼)

カタカナにしただけで同一人物なのだが、現在の彼女は「本物の化物」と呼ぶにふさわしい人物となっている。

実は彼女は《業物語》でドラマツルギーと一時行動を共にしたあとも、文字通り本当に「地球上の全ての国を巡り、世界中の全てを旅した」。さらに地雷撤去などの活動後は和製ジャンヌ・ダルクと呼ばれ有名人となる。だが20歳を過ぎてからは被災者支援ではなく、戦争そのものを失くす戦争仲裁人として、世界中の戦争を次々と停戦させ、平和条約を締結させまくる。だが「世界中の国境線を消す」ことに近しい度を越した平和主義者のその思想はもはや世界征服と紙一重であり、あらゆる国で国際指名手配犯のような扱いを受けている。

あらすじ

国際的重用人物となった羽川翼が、出身国である日本から己の痕跡を完全に抹消するため帰国することになった。羽川の警護を担当することになったみとめは、暦が知っている羽川の話を聞く。みとめから「滞在中、羽川がおまえに会いにくることはあるか?」と聞かれ、暦は「その心配はない」と答える。

家に帰ると月火が帰国しており、ひさしぶりに妹2人との食事かと思いきや、家には既に羽川が泊まっていた。食事後。2人で並んで食器を洗いながら、羽川は「阿良々木に会うために帰国した」という。

どうしてそんなことをしたのかと問う暦に、厳重に警護されたホテルからどうやって脱出したのか。そのトリックを見抜いたら教えるという羽川。

つかの間の会話を終え、彼女が阿良々木家を去ったあと、みとめに経緯を報告。暦は羽川の使ったトリックを、「全世界を旅していた時に見つけた"自分のそっくりさん"を使った替え玉トリック」だと結論づける。さらに、羽川が阿良々木家にやってきたのは、暦の部屋にあった、かつて羽川が使用した下着、切り取られた三つ編みといった「自身の痕跡を消去するためだった」と語る。

しかしみとめから、「影武者は警護されていた方で、阿良々木に会いにいった方が本物という場合だってある」と指摘されるが、それは絶対にないという暦。今の自分が羽川にとってどうでもいい男になれて嬉しいと語る。

ヒロインのその後~月火

■月火
日本の大学を中退し海外へいったあと、また中退し一時帰国していた。今度はダンススクールに通ってカジノで踊るつもりらしい。ヘアスタイルがかつての羽川のような三つ編み×2だったのは伏線だったのだろうか。現在も撫子とは交流があるようだ。

つづらヒューマン

新ヒロイン:甲賀葛(こうがつづら)

風説課の課長。
メンバーの中で唯一の人間である。
臥煙からは人間としてのコミュニケーション能力を買われ、風説課の指揮をとっており、霊感的なものは全くないため怪異の影響を受けない人物。

暦の能力を買っており、いつか風説課の課長となって欲しいとまで言っているが、必ずしも理想的な生き方をしなくとも、楽に生きてもいいとも語る。

戦場ヶ原ひたぎ

なんと現在は外資系の海外企業・・・しかも自身の父親のライバル企業に勤めており、金融トレーダーとして世界の経済を動かしているらしい。そのため、暦とは遠距離恋愛中。

大学時代は暦と2回別れて2回復縁している。
1回目は暦が大学で再会した育を(事情はあれど)家に住まわせたことで大喧嘩し別れたものの、育の脅迫まがいの説得により仲直りしたが・・・

老倉育

在学中に会計士の資格をとり、現在は直江津市役所で地方公務員として働いている。
この職業を選んだのは、学生のころ福祉を担当していた役場の女性にお世話になったから。今は公務員ローンで、中学時代暦と会っていたあの廃屋を買い取って暮らしているらしい。

高校卒業後、羽川に促され数学科がある大学を受験し、そこで暦と再会。下宿先を探して困っており、暦が両親に相談したところ「家に呼んであげればいい」という司令がくだされ、一時同居することとなる。しかしそれがひたぎの逆鱗に触れ、別れ話に発展したことで「仲直りしないと飛び降りて自殺する」といって脅迫。すぐに家も出るなど2人の復縁に協力してくれた。

しばらくは暦とひたぎの3人で楽しい大学生活を送っていたが、暦がくだらない理由で再びひたぎと別れた後は激怒。10月13日に4回目の絶交をした。

髪はいかにも公務員らしくきっちり結っており、メガネっ娘となっているが、再会した暦への毒舌や嫌いっぷりは変わらず、「ひたぎを追って海外へいったあと破局して路頭に迷えばいい」と心底思っているというが、なんだかんだで別れ話の相談に乗ってあげたあとは再び電話番号を交換。絶交は撤回された。

あらすじ

ひたぎと二度ケンカ別れした暦だが、正式なマネージャーとして働くか悩んでいたひたぎと電話越しに再び大ケンカ。3度目の別れ話となってしまう。

その後、書類の提出で訪れた役場で育と再会。かつてのような毒舌攻撃を喰らいながらも、ひたぎとの付き合いや今後の未来について相談することができた。

一体自分はどうしたいのか・・・。
かつての自分とは違う、大人となった自分の目には、真宵の姿が見えないのではないか?そんな恐れから避けていた北白蛇神社へ向かった暦は、「ここでひたぎとの結婚式を開く」と決意。

忍に協力してもらい、町中の怪異の調査報告書を作成。甲賀課長に「海外研修に推薦して欲しい」と頼み、さらに「忍がいれば海外の怪異の通訳ができる」と自身のプレゼンをする。

全てはひたぎと一緒になるために・・・。
無事推薦の返事をもらって家へ帰ると、阿良々木家にはサングラス姿のひたぎがいた。

なんとひたぎも、会社のチーフマネージャー昇任と引き換えに日本支部を設立させ、また直江津町で暮らせるよう手を回したという。

同じことを考えていた2人。
サングラスで隠されたひたぎの瞳には、泣き腫らした跡がある。そんなひたぎに暦は、「I love you」と告げる。それはかつて、ひたぎから送られた言葉だ。

そして物語を結ぶひたぎの言葉は、
全く流行らなかった、2人だけが知っているあの言葉だった・・・

印象的なセリフ

大人となった暦が、新たなキャラクターとともに怪異譚を解決していくミステリーパートと、ヒロインたちの5年後の姿が描かれる今作。撫子や斧乃木ちゃん、真宵が直接登場せず回想で語られるのみなので、扇や忍を除き、新キャラ含めて登場人物たちが全員「大人」という、物語シリーズで一番年齢が高い作品となった《結物語》。

なんといっても一番ギャップがあったのは羽川!委員長の中の委員長が国際レベルな危険人物となっているとは・・・。ただ本編の中で暦がいっていたように、猫物語以降「弱さ」を手に入れた羽川が、自分に関する思い出を消すという選択をしたことは少し淋しかった。

「みとめウルフ」はほぼ羽川メインのエピソードとなっているが、一番切なかったシーンは、「私、高校生の頃、阿良々木くんのことが好きだったんだよ。気付いてなかったでしょ?」といわれたあと、最後に暦が

「僕は高校生の頃、羽川のことが好きだったんだよ。気付いてなかっただろ?」

と言うシーン。
しかも羽川とは違って、「言った瞬間に後悔するセリフ」と言っているのがなんとも・・・。劇場版「傷物語」の冷血編を観た直後なので、この暦のセリフにはグッとくるものがある。

他にも、5年後の育に相変わらず「おまえが死ねばいいと本気で思っている」と散々いわれたあと、「もし互いに三十路まで独身だったら・・・」「お互い絞め殺し合いましょう」と別れ際に言われるシーンは最高だった。

《結物語》では育とひたぎとの大学時代のエピソードは暦の回想でしか語られないが、愚物語以降、育が大学で2人とそれなりに仲良くやっていたこと。絶交宣言後も、なんだかんだで前より仲良くなってる感じもたまらなかった。育はだいぶ後半から登場した重い過去を持つヒロインだったが、この暦との距離感は、物語のいいアクセントとなっている気がする。

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最後に

周防さんが緊縛プレイだったり兆間さんもやはり脱いだり・・・と今までのお約束を踏まえつつ、大人になったキャラたちの新しいエピソードが描かれた今作ですが、1作目の《化物語》のような雰囲気が再び戻ってきたような、新しい話なのに懐かしい話のような感じで、凄く面白かったです!!(今まで障り猫など創作怪異が多めだったのが、今作では「人魚」「ゴーレム」「人狼」などスタンダードなものしか登場しなかったことはちょっと驚きでした)

駿河や育、羽川ちゃんなどレギュラーヒロインたちとの人間関係も微妙に変わっていたりと、読み応えもばっちり! ラストの暦とひたぎのセリフ、互いの告白セリフが以前のと入れ替わっているのがよかったですね~!

そして一番びっくりしたのは、モンスターシーズンと称して《忍物語》が今年中に刊行予定という事実。しかも登場するのは「伝説の怪異の名付け親」・・・これは業物語に登場した、スーサイドマスターっぽいですね!?確かに今も存命してるようですが、果たして忍ぶと再び出会うのか?主人公とヒロインが結婚までいったのに、一体いつ終わるんだ!と思いつつ、ここまできたらむしろどこまで続くのか、逆に楽しみになってきました。西尾維新さんの刊行ペース、まじ速すぎるよ・・・!

↓劇場版「傷物語」完結!

↓前作の感想はこちら!