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【映画】セブン ネタバレ感想~見立て殺人ブームを巻き起こした七つの大罪事件!一度見たら忘れられないラストとは?

セブン [DVD]
グロ度 ★★★★
映像美 ★★★★★
ラストの衝撃度 ★★★★★
結論:サイコサスペンスの傑作!

原題:SE7EN
1995年 アメリカ
監督:デヴィッド・フィンチャー

※犠牲者&生存者、ラストのオチのネタバレあり!

※感想だけを読みたい人は目次ですっ飛ばしてください。

目次

ストーリー

定年まで1週間となったある日。
老刑事・サマセットは、後任としてやってきたミルズ刑事と共にとある事件を捜査する。だがそれは、つの大罪にあつらえた、恐るべき連続猟奇殺人事件のはじまりだった・・・!

登場人物

※吹き替えキャストはテレビ朝日版。

デイヴィッド・ミルズ(吹:森川智之)

地方からやってきた若き刑事。
血気盛んで、当初はサマセットと衝突が絶えなかったが徐々に彼を認め始める。

出世のためにケンカしてまで都会の殺人課に移動してくるなど、性格は直情的。手柄を立てようと躍起になる野心家な面もあるが、セルピコ刑事(※ニューヨーク市警に蔓延する汚職や腐敗に立ち向った警察官)に憧れる、純粋な正義漢としての面もある。

地方の殺人課に5年いたが、まだ新米のころ、刑事の一人が犯人に撃たれ、救急車に乗せるも目の前で亡くなってしまったという過去を持つ。しかし、その刑事の名前を思い出す事が出来ないらしい。

プライベートでは高校時代から付き合い結婚した妻・トレイシーと、犬3匹と暮らしている。(しかし引っ越す際、不動産屋に騙され地下鉄が通過する度にしょっちゅう揺れる欠陥住宅を買わされてしまった)。

トレイシーのことは愛しているが、仕事にかまけて家庭をおざなりにしている部分もあり、そのことで悩んでいる妻の気持ちに気付いていない。

演者は若き日のブラッド・ピット。
終盤の彼の演技は必見。

ウィリアム・サマセット(吹:勝部演之)

定年を控えた老刑事。
温厚で人には基本落ち着いた物腰で接し、どんな時にも冷静に証拠を集め地道な捜査を続けてきた。が、事件解決のためなら違法な手段をとることもある。

非常に几帳面な性格であり、身の回りや部屋は常に整理整頓されている。ベッドサイドには周囲の喧騒を紛らわせるためか、メトロノームがおいてある。しかし、眠れない夜には部屋でナイフ投げをすることも・・・。

優秀な刑事だが、長年に渡り多くの殺人事件を担当し「普通の人間」が持つ悪意を目の当たりにしてきたことで、人間自体に嫌気がさしているのか厭世的な考え方の持ち主。(過去、夫婦同然に暮らしていた女性がおり子供も出来たが、「こんなひどい世界に産んでいいのか」という疑問が拭えず、堕ろすよう説得。その後破局している)

読書が趣味で、図書館の常連。
彼に様々な文学の知識があったことが、犯人の手がかりを掴む一歩となる。

演者はモーガン・フリーマン。
一挙一動がかっこいい。

ジョン・ドゥ(吹:田中秀幸)

「七つの大罪」にちなんだ単語を殺人現場に残し、次々に人を殺していく連続殺人鬼。
「ジョン・ドゥ」とは日本語にするなら「名無しの権兵衛」的なもの。アメリカでは身元不明の死体に付けられる名前でもある。

知能が高く用意周到で、恐ろしく辛抱強い性格。実は、とある場面で主人公たちとは出会っている。また、映画を代表するオープニングタイトル場面で、ジョン・ドゥが犯行ノートを書くシーンや指紋をそぎ落とすシーンが描かれている。

演者はケヴィン・スペイシー。

その他のキャラ

■トレイシー(吹:大坂史子)
ミルズの妻。
小学校の教師をしていた。
ミルズに連れられる形で都会に引っ越してきたが、物騒な町に馴染めず内心では町を嫌っている。日々のすれ違いで夫とも距離ができ、サマセットを食事に誘った時にも「楽しい人だった」と過去形で話していた。

実は妊娠している。
だがこの町で産むことに不安があること、夫に言い出せないことで若干情緒不安定気味になっており、「唯一信頼できる人間」であるサマセットにだけ相談していた。

あらすじ

月曜日:暴食(GLUTTONY)

ミルズとサマセットが2人で始めて捜査することになった事件。

犠牲者はギネスブック級のデブ。
両手足を縛られた状態で、パスタに顔を突っ込んだまま死んでいた。現場の状況や検死の結果、額に銃を突きつけられ、脅されるがまま無理やり12時間以上料理を食べさせられていたことが判明。バケツにゲーゲー吐きながらも、ノドが腫れ胃がパンパンになるまで食べ続け最後には気絶。そのまま犯人に腹部を蹴られて内臓が破裂し死亡した。
・・・実は作中で本当に真っ裸を披露する唯一の人物でもある(死体だけどね!)

残されていたレシートから料理を作るために犯人は2回買い物に行っているなど、殺人に並々ならぬ労力をかけていることが発覚。

事件の異常性に気付いたサマセットは、この事件は続くと直感する。

火曜日:強欲(GREED)

犠牲者は悪徳弁護士・グールド。
自宅オフィスで殺害され、床には血文字で「GREED」という単語が残されていた。

また、肥満男の胃の中からプラスチック片が発見される。
現場を再度訪れたサマセットが冷蔵庫の裏に、脂で書かれた「GLUTTONY」という単語と、

long is the way and hard
That out of hell leads up to light
地獄 の闇から
光 に至る道は長く険しい

という、ミルトンの「失楽園」の1節が書かれたメモを発見。それがキッカケとなり、この事件が七つの大罪を元にした連続殺人事件であることを見抜く。

水曜日:晩餐

ミルズの妻から今夜食事に来て欲しいと電話がかかってきたため、夜はミルズの自宅に招かれるサマセット。晩餐を楽しんだあとは、火曜日の事件の整理をはじめる。

火曜日の朝遺体が発見されたグールド。
そばには「1ポンドきっかりの、骨も軟骨もない肉をよこせ。それを為せばあとは自由だ」と書かれたメモと天秤が残されており、天秤には1ポンドの重りと、同じ重さをしたグールドの肉片が残されていた。(これはシェイクスピアの喜劇「ヴェニスの商人」で、強欲な金貸しシャーロックが、期日までに金を返さなければ1ポンドの肉をよこせといった部分の引用)

現場の状況から、犯人は金曜日、事務所を閉める前に侵入。グールドの右手に肉包丁を持たせ、2日間にわたってどこの肉を切り取るか選ばせていたと考えられる(結果、グールドはお腹周りの肉を切り取り、出血多量で死亡した)。かなりエグい殺害方法だが、これと比べれば、犯人側が問答無用で切ってくれるだけ「ミュージアム」はマシ・・・か・・・?

この事件の動機が「罪の贖い」にあると考えたサマセット。だがどの現場にも指紋は残さず、目撃者もいない・・・。だが現場にあったグールドの妻の写真に、血でメガネのような痕がつけられていたことから「何かを見るはずだ」という犯人側からのメッセージだと推測。そのままグールドの妻に会いにいき、現場写真を見た彼女から、部屋に飾っていた抽象画が逆さまであること聞く。そして絵画を外した壁から、指で描かれた「HELP ME」という文字を見つける。

木曜日:怠惰(SLOTH)

夜通し待った鑑識の結果、助けてという文字を書いた指紋は被害者のものではなく、通称ビクターという男のもの。長く精神を病んでおり、麻薬や強盗など犯罪を繰り返し少女暴行の罪で服役したが、グールドが弁護したためすぐに釈放されたという経緯があった。

住所が割れ警察が突入するも、ビクターは左手首を切断された状態でベッドに縛り付けられており、ガリガリに痩せたミイラのような姿となっていた。壁には「SLOTH」という文字と、「To the world from me」と書かれた箱の中に、ビクターが日々衰弱していく姿を撮影した写真があった。一番最初の写真の日付は丁度1年前の今日であり、犯行は長期にわたり、警察が踏み込むタイミングまで計算されていたことが判明。かろうじて息があったビクターは病院に運ばれる。

現場はすぐに封鎖されるが、カメラマンが2人を撮影してくる。追い払うミルズ。どうやら警察の情報を記者に売っている関係者がいるらしい。

病院ではビクターの検査の結果、長期の監禁で脳は軟化、舌は自殺を試みたのか噛み切っていたこと。しかし存命のためのあらゆる処置がされており、尿道には管、さらに床ズレによる感染を防ぐ抗生物質や様々な薬品が投与されていたことがわかる。

その夜、ミルズの目を盗みサマセットに電話をかけるトレイシー。明日の朝、2人で会いたい、相談したいことがあるというが・・・。

金曜日:犯人

早朝。サマセットは、トレイシーからミルズとの子供ができたことを告げられる。彼女の孤独や悩みを理解しながらも、産むならちゃんとミルズに妊娠のことを話すこと。そして愛情を注いで2人で育てることを促す。

捜査に戻ったサマセット。
だがビクターの家賃は毎月郵便受けに直接現金で入っていたため大家も犯人を目撃しておらず、行き詰る。が、ミルズの「犯人が図書館に通っていた」という発言からヒントを得たサマセットは、七つの大罪に関する本・・・「ダンテ」や「カンタベリー物語」を借りている人間を、FBIが極秘裏に監視している図書館の本の貸し借りデータを元に探し突き止める。

その人間の名はジョン・ドゥ。
だがアパートを訪ねた2人にジョンは発砲し逃走。追いかけたミルズが腕を負傷し逆に撃たれそうになるも、なぜかミルズを殺すことなく、ジョンは姿を消した。

アパートの住人を買収しニセの通報をさせ、あらためてジョンの部屋を捜索する。指紋は一切残されていなかったが、ビクターの左腕や2000冊にも及ぶ犯行計画書など、大量の物的証拠が残されていた。

そして現像液で満たされた浴槽には、ミルズとサマセットの写真が。ビクターのアパートで出会った、カメラマンを偽った"誰か"・・・彼こそがジョン・ドゥだったのだ。

その後電話をかけてきたジョンは、2人への賞賛の言葉と今後の予定の変更を告げる・・・。

土曜日:肉欲(LUST)

手がかりを頼りに次のターゲットとなっている娼婦を探す2人。だが既に遅く、娼婦はジョンが特注したナイフ付のデ○ルドという恐ろしい凶器によって殺害されていた。(凶器を無理やり装着させられ、娼婦を殺すよう脅された男は恐怖で精神が崩壊しかかっていた)

事件のおぞましさに、「ハッピーエンドはない」というサマセット。ジョン・ドゥをイカれた殺人鬼としか考えていないミルズに、ジョン・ドゥも『人間』だと語る。

一人は愛する妻を抱きながら。
一人はナイフを投げ続けながら。
それぞれの夜を過ごす。

日曜日:高慢(PRIDE)

犠牲者は美人モデル。
鼻を削ぎ顔をズタズタに切り裂かれた状態で、左手には睡眠薬、右手には電話が糊付けされていた。通報することも可能だったが、醜い顔で生きることに絶望した彼女は自ら死を選んでしまったらしい。壁には血文字で「PRIDE」と残されていた。

残りの惨劇を止めるため、そしてもう少しの間ミルズの相棒でいるために、退職を伸ばす決意をしたサマセット。だがその矢先、警察にジョン・ドゥが自首して来る!

モデルの血を浴びた姿で出頭してきたその男は、自ら全ての指の皮を削ぎ指紋を消し、仕事もしていないのに借金がある形跡もなく、大量の現金を持っていた。しかし名は偽名で、身元も全くわからない。

だが弁護士を雇い、ミルズとサマセットに隠した2人分の死体の場所まで同行するよう求め、応じなかった場合は精神病を主張し罪を認めない取引を持ちかけるなど知能は高い。

ジョンにモデルとは別の人間の血液が付着していたことから、死体を発見し罪を認めさせるため、2人はジョンとともに行動することになる。

車中では自身を選ばれたものだというも、サマセットに「人殺しを楽しんでいる」「殉教者とは思えない」と言われた時には口をつぐんでいた。

だが事件は「罪人に罪を償わせただけ」と語り、自分の犯した事件により普通の人間たちが己の罪に気付くと信じ込んでいる。

ラスト~嫉妬と憤怒

無機質な高圧線の鉄塔が立ち並ぶ荒野へと赴く3人。そこへ、1台の宅配業者のトラックが、ミルズ宛の宅配便を届けにやってきた。ダンボール箱を開けたサマセットは驚愕する。

そこにあったのは
ミルズの妻、トレイシーの首だった。

ジョンはあの時・・・記者として出会った時にミルズの名前を聞き、警察から情報を得ていた。ミルズの平凡な夫としての暮らしを妬み、彼女を殺した自分も罪人だ、と話すジョン。

彼が自首してきたのは、残された2つの罪──嫉妬(ENVY)をジョンが、そしてミルズに自分を殺させることで、憤怒(WRATH)の罪を犯すように仕掛けるためだと理解したサマセット。

「殺せばおまえの負けだ」とミルズに銃をおろさせようとするが、ジョンは命乞いをされた時に聞いたのか、トレイシーが子供を身ごもっていたというミルズが知らない真実を告げてしまう。

葛藤するミルズ。
しかし彼は、引き金を引いた。

・・・事件が終わり夜が来た。
連行されていくミルズを見送ったサマセットは、ヘミングウェイの小説「誰がために鐘は鳴る」から

この世は素晴らしい。
戦う価値がある。

・・・という1節を暗唱する。
しかし彼は最後に、「後の部分は賛成だ」とだけ呟いた・・・。

考察:ジョンは本当に神を信じていたのか?

終盤の車中での会話シーンの中で、一応あの殺人事件は「罪をつぐなわせる」ためのものだった発言はある。

しかし、「暴食」の殺害現場に残されたメモに書かれた失楽園の言葉は、神に地獄に堕とされた天使であるサタンが「エデンの園まで行くのはかなり大変だけど、一緒に神に復讐しにいこうぜ!!」的な意味で、仲間の元天使(悪魔たち)に呼びかけているセリフなのだ。

選ばれた者発言など神の代行者を気取っていたようにも見えたが、案外罪深き人間にいつまでも罰を与えない神に絶望し、神に復讐していたのかもしれない。

印象的な"緑"

常に人の声や雑音がつきまとう都会の騒々しさを表す為のノイズの演出が秀逸な本作では、それにあわせてかザラついたモノトーンの暗めな映像に、突如映えるようなが現れる。図書館のランプ、ゴム手袋、ノート、クーポン券・・・これらのアクセントカラーのような緑色が印象に焼きつき、どうしようもなく物語にひきこまれる要素の一つとなっている。

こういった視覚効果も魅力の一つだが、オープニングの映像美や、エンディングの上から下に流れるスタッフロールという、通常とは「逆」の流れとなる=刑事が犯人を捕まえてハッピーエンドとなる流れではないというギミック(?)など、最後まで飽きさせない作りになっているのも面白い。ラストの雰囲気そのままのような、ノイズまじりのエンディングも名曲だ。

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テレ東版はブラピ吹き替えではお馴染みの堀内賢雄さん、日曜洋画劇場派なら森川智之さん、ビデオ版なら松本保典さん。ちょっとマニアックなところなら、フジテレビ版の真地勇志さん・・・これらの日本語吹き替え版はレンタル版のブルーレイには残念ながら収録されていない。しかし、市販のブルーレイには、なんと上記4種類、全ての日本語吹き替え版が収録されている。

今回は完全に個人の趣味で、そして馴染みという理由で日曜洋画劇場版を紹介したが、ソフト版の吹き替えではジョン・ドゥ役を野沢那智さんが担当していたりと、それぞれが聞き逃せないキャストとなっている。吹き替え好きなら聞き比べてみても損はない。

~こんな人にはオススメできません~
■救いはないんですか!?ってなる人
映画史に残る3大胸糞エンドの一つとして有名。ハピエン好きにはおすすめできない。あとは設定上の死に方がとにかくグロいのが許容できるかが勝負。

最後に!

サマセットとジョン・ドゥ。
互いに人間の根っこにある悪意をみつめていた2人ですが、もしサマセットが諦めるのではなく別の意味で戦うことにしていたら、彼もジョンのような人間になっていたのかもしれません。あの一人で黙々とナイフを投げるシーンは、普段は温厚なサマセットにも、一定の凶暴性があることを示唆しているように思えます。

 見立て殺人は事件モノの王道となり、今ではむしろ食傷気味になっちゃってますが、重厚な映像と役者陣の名演によって特別な映画となっている本作。今見直しても面白かったです!

↓雨降る町に現れる殺人鬼!