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紅の豚 感想(ネタバレあり)~ポルコはなぜ人間を辞めたのか?ラストでジーナは賭けに勝ったのか?など

紅の豚 [DVD]
飛ばねぇ豚はただの豚だ。

ハードボイル度 ★★★★★
漢のシブさ ★★★★★
結論:大人になってわかるかっこよさ!

1992年 日本
監督:宮崎駿

この映画は、飛行艇時代の地中海を舞台に、誇りと女と金をかけて空中海賊と戦い、紅の豚とよばれた一匹の豚の物語である。
──『紅の豚』冒頭より

目次

登場人物

ポルコ・ロッソ(演:森山周一郎)

世界一かっこいい豚。
愛機である紅の飛行艇・サボイアS.21で、アドリア海の空を駆ける飛行機乗り。空賊を狩る凄腕の「賞金稼ぎ」として有名。ちなみに「ポルコ・ロッソ」とは、イタリア語で「紅い豚」=豚野郎など侮辱的な意味を持つ。

本名はマルコ・パゴット。
元はイタリア空軍のエースパイロットだったが、現在はその名で彼を呼ぶのは旧知の仲であるジーナと数人しかいない。(ちなみに人間だったマルコの青年時代を演じているのは古本新之輔さんである)

劇中、彼がなぜ豚の姿になってしまったのかは深くは語られない。が、ジーナの話や公式のあらすじによると「自分で魔法をかけ豚になった」らしい。

ジーナ(演:加藤登紀子)

「マルコ、今にローストポークになっちゃうから」

今作のヒロイン。
ホテル・アドリアーノのオーナーであり、歌手。
その歌声と美貌は「アドリア海の飛行艇乗りは、みんなジーナに恋をする」と言われるほどに有名で、荒くれ者の空賊たちですらアドリアーノの半径50km以内で盗みはしない。

マルコの幼馴染であり、彼が人間だった時を知る数少ない人物。過去にマルコが立会人となり、彼の親友であるベルリーニと結婚式をあげたが、その2日後にベルリーニは戦死。その後同じくマルコの友人でもある2人の飛行艇乗りと結婚したが、全員と死に別れてしまった。

ずっとそばにいてくれたマルコに対し「賭け」をしており、店ではなく家の庭でマルコが尋ねてくるのを待っている。もしマルコが来たらその時は、今度こそ彼を愛そうと決めていた。ラストで「賭け」の結果は「フィオとの秘密」となっているが・・・実はその答えは終盤でちゃんと明かされている。

カーチス(演:大塚明夫)

「話は聞かせて貰ったぁぁぁ!!」

空賊たちに雇われた、野心溢るるアメリカ人の飛行艇乗り。
愛すべきバカとも言える性格だが、操縦術ではポルコと渡り合うほどの腕を持つ。美人に弱く、ジーナに振られたあと即効でフィオに求婚するなど立ち直りも早い。ポルコとは互いの名誉とフィオを賭けて戦うことになる。

岩の隙間で踏んじばりながらポルコたちの会話を立ち聞き(?)したり、ビルの3階ぐらいの高さから飛び降りて着地するなど、地味に身体能力が高い。というか尋常ではない。さすがのちのスネーク。

フィオ(演:岡村明美)

「彼らの一番大事なものは、金でも女でもない。名誉だって!」

今作のもう一人のヒロイン。
「ピッコロ社」社長の孫娘で、飛行艇作りのプロフェッショナルである祖父の血を受け継ぎ、17歳という若さながらポルコも認める技術力と発想を持つ。見かけよりもお尻が大きい。中盤、ポルコの飛行艇に一緒に乗り込み行動をともにし、明るさと素直さ、そして人一倍の度胸を持ち合わせた性格で、マンマユート団の野郎どものハートを奪っていった。

幼い頃、マルコと同じ部隊にいた父親からマルコ・パゴット大尉の武勇伝を聞いて育ったため、最初からポルコに対して憧れを持っていた。が、彼を知っていくうちに徐々にポルコ本人への好意に変化していったようだ。作中では2回、ポルコのほっぺとお口(!)にチューをする。マジうらやまぁ・・・。

ちなみに演者の岡村明美さんはこの作品がデビュー作である。

その他のキャラ

■ピッコロのおやじ(演:桂三枝)
「いい娘だろ。手ぇだすなよ」
ピッコロ社の社長。フィオの祖父。
気のいいおっちゃんで、ポルコとは長い付き合いらしい。息子がみんな出稼ぎにいってしまったため、ポルコの飛行艇を親戚の女たちの手を借りて作った。倒産間近な飛行艇会社で、秘密警察に追われているにも関わらずポルコに協力したりと豪胆な人物だが、食事の前には神の祈りを捧げるといった面も。

声を担当しているのは現在は6代目となった桂文枝。非常に味わい深い芝居をみせくれる。

■マンマユート・ボス(演:上條恒彦)
「仲間はずれをつくっちゃ可愛そうじゃねぇか!」

空賊「マンマユート団」のボス。
ヒゲもじゃでガチムチなおっさん。部下もみんな同じヒゲと鼻をしている。
船を襲い盗みは働くが、人質の子供には危害を加えなかったりと、基本人を傷つける輩ではない。
中盤はフィオの心意気に惚れ、ポルコとカーチスの決闘を取り仕切り、彼らの空中戦の(視聴者への)解説も担当する。

■マンマユートの部下たち
可愛い女の子に弱い野郎ども。ボスと同じく子供にもとても優しい。
フィオにメロメロになったあとは、カーチスとの決闘前に手に花束を持って写真撮影をねだっていた。ちゃんとお風呂にも入りました!

■人質の幼女×15人
冒頭でマンマユート団に人質として攫われる幼女たち。はじめてみる空賊にビビることもなく、元気いっぱいにさらわれていった。飛行艇が沈んだ後も「スイミングクラブの子だから」と自ら海に飛び込むなど最後までボスを振り回した。

■フェラーリン(演:稲垣雅之)
ジーナと同じく、ポルコを「マルコ」と呼ぶ旧友。
現在はイタリア空軍の少佐であり、その立場を使ってマルコを再び空軍に誘う。が、これは秘密警察に追われるマルコの身を案じてのことであり、マルコが誘いを断った後も何かと手を回し、彼を助け続ける。(カーチスとの決闘時には、ジーナに空軍がくることを暗号で伝えていた)

あらすじ

アドリア海のとある小島に住む1匹の豚、ポルコ。真紅の飛行艇で空を駆ける凄腕の飛行艇乗りであるポルコは、賞金目当てに空賊退治を請け負う日々を送っていた。しかしある日、空賊が雇ったカーチスという男に撃墜されてしまう。

修理のため、ミラノにある馴染みの飛行艇会社・ピッコロ社に向かったポルコは、そこで社長の孫娘のフィオと出会う。当初は乗り気ではなかったポルコだが、若くして優秀な設計士であるフィオの情熱を認め、飛行艇造りを任せることに。

ようやく飛行艇が完成に近づいたある日、政権に非協力的なポルコに秘密警察からの追っ手が迫る。フィオは自分が手がけた飛行艇の調整をするため・・・そして自分がポルコの「人質」になることで、「ピッコロ社が飛行艇を造らされた」という言い訳をするために、ポルコと共に生まれ変わった飛行艇に乗り込み飛び立つ。

フェラーリンの手助けもあり無事隠れ島についた2人だが、待ち伏せていたマンマユート団含む空賊たちに取り囲まれてしまう。しかし、飛行艇を壊そうとする空賊たちをフィオが一喝。その心意気に討たれた空賊たちと、その場で話を聞いていたカーチスがフィオを気に入ったことで、ポルコはフィオを、カーチスは賭け、再びポルコとカーチスが決闘をすることになった!

決闘の日。
互いの愛機のエンジンをうならせ、一生に一度見られるかどうかというハイレベルな空中戦が繰り広げられる。しかし結局決着はつかず、地上でガチンコの殴り合いがはじまる。互いにカウンターを喰らい、同時に倒れる2人。そこへ空軍の襲撃を知らせにジーナがやってくる。ジーナの「あなたもうひとり女の子を不幸にする気なの?」という言葉を聞き、立ち上がるポルコ。決闘はポルコの勝利となった。

一緒にいくと暴れるフィオを「カタギの世界に戻してやってくれ」と、ジーナに託すポルコ。別れ際、フィオから唇にキスを受ける。直後、なぜかポルコの顔を見て驚くカーチス。

──そして月日が経ち。
ジーナと友達になったフィオはピッコロ社を継ぎ、カーチスはかねてよりの夢であったハリウッドスターに。マンマユート団やかつての空賊たちも、相変わらずホテル・アドリアーナへ顔を見せてくれる。

果たして、ジーナの「賭け」はどうなったのか?
その答えは、彼女たちだけの秘密・・・。

ラスト~ジーナとマルコの結末は?

ラスト。
フィオがホテル・アドリアーナの上空を飛んでいるシーンで、ジーナの家の庭にポルコの赤い飛行艇があることから、庭へ迎えに来た=ジーナが賭けに勝ったことが示されているため、あのカーチスとの決闘後、恐らく2人は結ばれたのだと思われる。

なぜポルコは豚になったのか?

豚になる魔法を自らかけ、マルコ・パゴットという名前を捨て「ポルコ・ロッソ(豚野郎)」という名前をつけたのはなぜなのか?

それは恐らくフィオとの回想シーンにもあったように、自分一人だけが生き残ってしまったことへの後悔、戦争で人を殺してきた自分への嫌悪感、そしていつまでも戦争をやめない人間への絶望から、彼は人間を辞めてしまったのだろう。

この「自分で自分に魔法をかける」という考えは、のちのハウルにも通じる、「ハウルの動く城」に登場するソフィーも、はじめは魔女から魔法をかけられ老女となるが、実は途中でその魔法は解ける(そのため作中では年齢が元に戻っている描写がある)。だが解けたあとも彼女が老女の姿になるのは、自分に自信がないソフィーが「老女でいた方がいい」と思い込んでいる=自分で魔法をかけているためなのだ。

作中でポルコが何度か人間の姿に戻るのは、「フィオを見てるとな、人間も捨てたもんじゃねぇってそう思えてくる」というセリフにもあるように、フィオを通して人間への希望みたいなものを取り戻していったからなのではないだろうか。

最後のキス

フィオからの別れ際のキス。
ほっぺではなく唇にキスされたあと人間に戻ったような描写があるが、これは「お姫様からのキスが呪いを解いた」・・・というよりも、フィオの愛情を受けて、ポルコが人間として誰かを愛する気持ちを取り戻したという描写だったのではないだろうか?

フィオからキスされた時、ポルコは顔を赤くしたりはしていない。ポルコが真っ赤になったのは、カーチスから、「ジーナはてめぇに惚れてる」「ジーナはおめぇが来るのを、ずっと庭で待ってんだぞ!」と言われた時である。

散っていった戦友の思いや、自身もいつジーナを追いていくかわからない飛行艇乗りであることから、その気持ちにずっと蓋をしていたポルコだが、フィオのキスでジーナを愛している自分自身に向き合うことができたのかもしれない。

最後に!

透き通るような真っ青な海の美しさは、20年以上経っても見劣りしないレベルの作品だと思います。でも「紅の豚」って、子供のころは他のジブリ映画と比べると唯一「難しくてあんまり覚えていない映画」だったんですよ!なんて勿体無いって大人になった今は思いますけど、小学校低学年の自分には、なぜポルコだけが豚なのか?とか、ファシズムといった世界情勢もいまいち理解できず、途中で飽きちゃったんですよね・・・。

いま見ると、ポルコがフィオに自分の過去の体験を語るシーン・・・真っ青な空のなか、一筋の雲のように、堕ちていった無数の飛行機たちがマルコを残して舞い上がっていく・・・あの場面が泣けて仕方ないです。

大人になったいまこそ、キャッチコピーの「かっこいいとは、こういうことさ」の意味がわかる映画でした。
とはいえ例え成人しようとも、あの誰もが一度は言ってみたいけど、言う機会は永遠にないであろう伝説の名言「飛ばねぇ豚はただの豚だ」が似合うような大人にはなれないんですけどね!!

↓来週は猫!

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