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【小説】愚物語 感想(ネタバレあり)~魔法少女斧乃木ちゃん!?&育のその後のストーリー!

愚物語 (講談社BOX)
「阿良々木派よ」

愚物語《オロカモノガタリ》
講談社
作者:西尾維新

※ストーリーのあらすじ、続・終物語の重大なネタバレもあり。未読の方は非推奨です。

 

目次

そだちフィアスコ

転校先の学校で「今度こそ失敗はしない」と意気込む老倉育。彼女は初日の自己紹介で、「友達」になる人間にアタリをつけていた。そしてクラスから浮いている女子・忽瀬亜美子(ゆるがせあみこ)と「友達」になるべく話しかけるが、なぜかガン無視されてしまう──育はまた「失敗」を繰り返してしまうのか?

ファンシーでメルヘンな格好をしている余接ちゃんが表紙ということで、てっきり余接ちゃんが主役!な内容かと思いきや、前半戦の主役は「終物語」のアニメで大活躍だった老倉育のその後が描かれる「そだちフィアスコ」!(しかも愚物語の半分を占める大ボリューム)

タイトルの「フィアスコ(Fiasco)」とはイタリア語で「大失敗」「しくじり」を意味する言葉・・・嫌な予感しかしない!

その後のあらすじ
一度無視された後も、普通なら引くところを押して押して押しまくってしまう育。ついには忽瀬に「何考えとんじゃおんどれぇ」とヤクザ口調(!)で恫喝されてしまう。が、口の悪さとは裏腹に、彼女は「クラスメイトで誰を頼ればいいか」など詳細なクラスの人脈情報を育に教えてくれる。しかしその次の日から忽瀬は学校を休んでしまった。それに比例して、クラスメイトがやけに自分に優しくなったことを訝しむ育は、独りきりで調査を開始する。

老倉育の行動式
1ヶ月しかいない転校先のクラスの問題に、触れなければいい問題に、自ら首を突っ込でしまう育。作中の育の行動は、読者からみれば悉く「余計な行動」で、見なかったフリをすれば穏便に済む問題ばかり。だが育はそれをしない。一からやりなおせるかもしれないチャンスをふいにしても、不幸になると解っていても──「引くに引けない性格」なのだという。

終物語では病みっぷりが強調されていましたが、今回彼女の行動や心情を読むに、育も「正しいと思ったことを突っ走る=暴走するタイプ」であり、それはある意味、ファイアーシスターズや暦と、ベクトルが違う似たもの同士・・・ということなのかもしれません。

それにしても忽瀬に会いに塾にまで行ったり、そもそも情報を聞き出す為に女生徒を拉致ったり、やることが結構スゴい。

ラストのオチ
実は忽瀬は元々クラスの姉御肌的なリーダーだった。が、ある日クラスメイトの幼馴染とトラブルを起こし、その子が学校に来なくなったことで、忽瀬もまたクラスから孤立したという裏事情があったことを知る。さらに偶然立ち寄ったゲーセンで、忽瀬とライバル関係にあったもう一人のリーダー・珠洲林リリと、学校を休んでいるハズの幼馴染の話を聞いてしまったことで、リリが幼馴染と裏で手を組み、わざと忽瀬を孤立に追い込んでいたことを知ってしまう。

何も知らなかったフリをすればいいというのに、育はなんとリリの携帯をダッシュで奪い、忽瀬から聞いていた誕生日の情報から、鮮やかにロックを解き悪事の証拠を手に入れる!

・・・病み上がりなのに瞬発力が尋常じゃなくない?とかツッコミどころもありつつ、育は証拠と引き換えに「今から忽瀬と仲直りしてこい」と告げる。そしてクラスには全員が揃ったが、育は再びぼっちの日々を送ることになり、更に家には元父親が訪ねてくる・・・。

というオチ。
結局、転校先でも「普通の学校生活を送ること」には失敗し、誰が幸せになるわけでなく、依然として育は「不幸」のままだ。それでも育は、失敗したことを恥じてはいない。彼女は間違いなく、以前と同じ過ちだけは繰り返さなかったのだから。

胸熱だった台詞
この話で一番盛り上がる、仕組まれていた証拠をつかまれ激怒したリリから「忽瀬派なのか」と言われるも、育が阿良々木派よと答えるシーン!

このセリフが育の口から出てきたという事実が何よりも嬉しかった。1ページまるまる「嫌い」という文字で埋め尽くすほどに暦のことが「嫌い」な育ですが、密かに暦が家を訪ねてきたのではないかと期待するなど、本心は明確のようです。

異色のヒロイン
それにしても育関連の話には一切怪異が登場しません。育だけが唯一、「怪異と関わりのない物語シリーズのヒロイン」なのが何か意図的。まさかラストにちょろっと登場した父ちゃんが怪異だったりして!?(まぁ、奥さんや子供に暴力振るうなんざ怪異以上に最悪ですけれども)この育の父親との問題は、今後の物語で描かれることがあるんでしょうか?期待してしまいますね。

するがボーンヘッド

「掃除が行き届いていない」と文句を言ったことで暦と喧嘩をした駿河。仕方がないので後輩である扇くんと一緒に部屋を片付けている最中、もう一つの猿の手と、さらにふすまの中に隠された母親からの暗号を見つけてしまい──

肉だの腸だの、物騒な単語を多用したどっかの抉りて殺せみたいな暗号文を解くため、謎の後輩と推理するという、ミステリー仕立てなストーリー。

臥煙遠江
ですが一番のミステリーは、またも登場した駿河の母親・遠江の存在でしょう!彼女自身の物語は深く触れられることはないのですが、死してなお現実世界に現れたりと、謎ばかりの人物。ネタバレになりますが、上記の暗号はそんな人物の過去の恋文であり「猿の頭」・・・木乃伊の隠し場所の在りかを示すものでもあります。今回は彼女と神原家の確執などと共に少しだけ述べられましたが、既に暦の物語が終焉を迎えている以上、これから彼女や彼女が遺した「猿の木乃伊」関連が関わってくる、なんてことが在りえるのだろうか・・・??

個人的には、母親と話す時だけ敬語になる駿河が素晴らしく萌えます。

男性の忍野扇
そして同じくらい謎なのが、駿河の後輩として「忍野扇くん」が登場していること。一時期男の子として登場していた、学生服を着た忍野扇ですが、考えてみれば、この「扇くん」という存在は駿河しか会った事がないような?そして彼に対する駿河の態度は、暦が扇ちゃんに接していた時とよく似ています。もしかして扇くんは、駿河から生まれた「駿河の怪異」なんでしょうか?だとしたらなぜ、性別が逆になっているのかが気になります。暦には女性の扇、駿河には男性の扇・・・この謎についてはまだまだ物語がありそうですね。

つきひアンドゥ

斧乃木ちゃんがひょんなことから魔法少女になってしまう話。

デンジャラスガール月火
人形のフリをしながら、不死鳥の怪異である月火を見張っていた斧乃木ちゃん。だが大好物のアイスを食べている所を月火に見つかってしまう。咄嗟に人形のフリをするも時すでに遅く、動く人形に対しての最も的確な対処法・・・をつけようとする月火。ガチでヤバい行動に対し、ついに人形のフリが出来なくなってしまった余接!そこで・・・

「やぁ!ボクは異次元から魔物を退治するために魂だけの状態でやってきた正義の魔法少女だよ☆でも魂だけじゃどうにもできねーから仕方なくキミの人形に憑依させてもらってるんだ☆」

という驚愕の設定を作ってしまうという色んな意味でヤバい話。というか月火ちゃん、千枚通しといい、やることに躊躇がなさ過ぎて怖い!!

だがこのテンジャラスさも、余接が推測するには「不死鳥の怪異」であるが故に、危機感を抱くことがないから咄嗟にとんでもない行動をしてしまうことや、「ぐちゃぐちゃに潰れる」などありえない状況で"死んで"も、月火には今後の人生に支障がでるような精神的ダメージなら、記憶ごと抹消するという特異性があることが判明します。

色んな意味でデンジャラスな月火。肉体的なダメージだけではなく、精神的なダメージも全快させるというこのスキルは、全キャラクター最強なのかも!?余接の観察からすると、姉である火燐も月火が人間ではないことに薄々は気付いているようなので、月火ちゃんの物語は今後も登場するかもしれませんね。

余接と撫子
晴れて新米魔法少女となってしまった余接は、月火と関係があり、更に「魔物」を描いてもらうにはうってつけの少女・・・かつて神だった千石撫子に会いに行きます。この二人の組み合わせっていうのが何か新鮮ですね。撫子は以前とは大分様子が変わり、真剣にマンガに取り組んでいるよう。さらっと描いて貰おうとしたナメクジに、トーンや背景まで書こうとする凝り性っぷりは微笑ましかったです。

感情のない人形
自分には感情が無いと再三言う余接ですが、暦たちに対しての態度を見るとそうは見えません。今回、撫子に描いてもらったナメクジの魔物が予想以上に強力になってしまい、更に月火のオウンゴールな行動により本当に死ぬかもしれない状態にまで追い込まれてしまった時、「死ぬのは嫌」「超怖い」と恐怖を感じています。本当に感情がないのであれば決して感じない"恐怖"・・・仕事にはプロフェッショナルな彼女が今回らしくなく失敗を重ねてしまうのは、もしかしたら"感情"が芽生えつつある証拠なのかもしれません。

愚物語 (講談社BOX)

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業物語 (講談社BOX)

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【最後に!】
老倉育、神原駿河、斧乃木余接・・・3人の愚か者が主人公だった「物語」。伏線回収に定評がある西尾維新さんの作品ですが、今回も明らかに匂わせている伏線がいくつもあります。1月14日に発売される「業物語」でこれらの伏線は回収されていくのでしょうか?。愚物語ではその後の話が描かれましたが、「業物」「業(カルマ)」・・・こちらは過去の話になるのかな?うーん早く読みたい!

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